未来の教員を目指す学生と関わって⑨一部のまとめ

現在の学校現場、とりわけ公立学校がとても多様化していることについてお話しています。

多様化の状況として、話す言語が違う子ども、不登校傾向の子どもや、発達障害傾向のある子どもなど本当にさまざまです。

対応に際して、配慮すべき点はいろいろありますが、彼らと教師が一対一で対応しているときには、さして問題とならないことが、学級

全体の中での対応となると、難しい問題が生じてくることがあります。

例えば、【多動傾向】のある子どもが、授業中に立ち歩いたとしましょう。

その子どもについて、また【発達障害】についての知見がある先生ほど、「【多動傾向】のある子に声かけしても、今はじっとすること

は無理だから、しばらく様子を見よう」と、判断されるかと思います。

一見、【多動傾向】のある子への配慮のように見えますが、ここに大きなトラブル発生の可能性があります。

 

ここで、考えたいことは、該当する子どもに対しての指導だけではなく、学級ひいては学年全体への指導も考えるという二つの視点が必

要ということです。

すなわち、【森と木】両方を見る目が必要となってきます。

①まず、【木】について考えましょう。(詳しくは以前のブログを参照ください)

すなわち、該当児童への対応です。

②【森】について考えます。

すなわち、学級全体への対応です。(詳しくは以前のブログを参照ください)

 

再度、ここでお話したいことは、【必要な配慮はするが、特別扱いはしない】ということです。

【木】への配慮に傾くあまり、他の子どもたちに不満が募り、学級崩壊状態になった学級を見たことがあります。

そうした状態になると、教員の意図も伝わらず、学級の子どもたちの心も荒廃し、該当の子どもも居場所を見つけられなくなります。

子どもたち全員にとって、学級・学校に心の落ち着く場所がなくなってしまいます。

しかし、該当の子どもへの合理的な配慮は、もちろん必要です。

そして、そうした一部の子どもに焦点を当てた配慮は、学級全体の子どもへの配慮ともつながっていきます。

言わば、【ユニバーサルデザイン】となっていくわけです。

ここに、【森】ー学級の子ども全員を対象とした指導の必要性があるわけです。

 

こんな事例があります。

私が教員として勤務していた中学校の3年生が、修学旅行に出かけることとなりました。

その学級には、発達障害傾向の強い生徒がいました。

ホテルの部屋はどうするか。ディズニーランドの班行動はどうするか。都内分散活動はどうするか。等、考えなければならないハードル

はたくさんありました。

集団で行動することが苦手な生徒が、どのように過ごすか。

担任と一対一は、もちろん本人が嫌がります。

しかし、単独行動は、全く事情が分からない東京では危険です。

「やはり、班行動しかない。しかし、同じ班のメンバーにはかなり負担をかけてしまう。それを生徒たちに頼んでいいのか」と担任は悩

んでいましたが、生徒たちがあっさりと解決してくれました。

(以前、配慮が必要な生徒とずっと一緒の行動を頼まれた生徒が、「修学旅行に行きたくない」と悩んだという事例もあります)

幸い、集団行動が苦手な生徒は、特定の班や級友への執着も少なかったのです。

そこで、『都内分散は1班と一緒に』『ディズニーは2班と一緒に』『ホテルの部屋は3班と一緒に』という案を生徒たち自身が考え、本

人と相談してみました。

本人は、簡単に了承してくれました。

(このケースにも、問題点はありますが、ここでは扱いません)

そして、三日間全員が無事に楽しく過ごすことができました。

その後、学級の生徒の作文には「心配していたけど、あの子の面白いところが分かった。2学期の生活班づくりの時には、一緒の班にな

ってみたい」という記述もありました。

配慮を要するとは、【腫れ物に触る】とか【特別扱い】といったことではないと考えます。

ぜひ、初めの一歩を踏み出していただきたいと願っています。

 

次回からは、別の課題・ケースについて考えていきましょう。

 

 

 

ハピネスでは、こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキの練習をしたりする会【コミュニケー

ションカフェ】を開いています。

リアルでもOnlineでも開催しています。

詳しくは、このHPのトピックスをごらんください。