【子どもの心 若者の心 そして‥】6 『お客さん扱い』からは何も生まれない

目下、集団への適応が苦手な子ども及びその周囲の子どもたちへの対応について考えています。

とりわけ、集団の中での【個の尊重と集団の協調性】の兼ね合いの難しさについて取り組んできました。

最初に、個の尊重について、子どもたちを本当に大切にするとは、彼等に社会で生きていく力を身に付けさせる』こととお話しました。

(例えば、ソーシャルスキルトレーニング 詳しくは以前ブログをご覧きださい。)

そして、夢中になると他のことが見えなくなってしまうAくんの事例を基に、一人を大切にする考え方は、その一人を特別扱い(子どもたちの言

い分では、ひいき)するのではなく、そうした扱いを全ての子どもたちに対応していく考えにつながると思います。

これこそが、全ての子どもたちを大切にする【ユニバーサルデザイン】の考え方とお話しました。

 

そして、前回からもう一つの考え方集団の協調性について、取り組んでいます。

以下の事例を基に、考えています。(再度掲載)

④多くの中学校では、2年生が野外学習へとキャンプなどに出かけます。私が勤務している学校でも、夏休みに出かけました。ハイキング・キャンプファイアー・飯盒炊飯等さまざまなイベントを行います。生徒たちは、「疲れた」「面倒」と口では言いながらも、楽しそうに取り組んでいました。最終日には、川に入り放流されたマスを捕まえて、その後美味しくいただくという「マスづかみ」が行われました。マスを捕まえるという行為は、それまでの生徒の生活体験が大きく関係し、小さな頃から自然に馴染んているか否かに影響されると考えます。1年生の半ばから不登校傾向のAくんが、保護者や担任、級友の勧めがあり、この野外学習に参加していました。2日間何とか過ぎ、彼が級友と話す姿も見かけられるようになりました。担任の先生は「来てくれて良かった」と喜んでいたのですが‥彼は、ずっと小さな頃から家族でキャンプへよく出かけていました。そして、釣りや魚を捕まえることにも、他の生徒たちよりも慣れています。その上手な姿を見て、他の生徒たちが「どうやればいいの?」と尋ねるようになりました。彼も親切に教えていたのですが、もともとコミュニケーションが苦手な彼ですから、「どうしてできないの?」等と上から目線のアドバイスが増えてきました。すると、2,3人の生徒が「お前には言われたくない」「ふだん学校に来ていないくせして‥」と口に出しました。すると、即座に彼の顔色が変わり、「家へ帰る」と叫び始めてしまいました。すぐに担任、養護教諭、スクールカウンセラーが集まり、彼を落ち着かせようとしましたが、彼の気持ちは変わらず‥保護者が迎えに来て、一緒に帰宅することとなりました。その様子を近くで見ていた同じクラスの女子生徒たちが、「あーあ、あんたちが余分なこと言うから」と、男子たちを非難しまし。そこで、男子たちは「えっ?俺たち悪者?」と私のところに相談に来ることとなりました。

こういった類の問題は、学校ばかりでなく、社会生活全般でよく起こることと思います。

おそらく、大人ならば上手に(その良し悪しや真意は別として)スルーしていくことかなぁと思います。

 

あなたは、どのように考えられましたか?

私は、この男子生徒たちは「仕方ないよね」と思います。

彼ら登校している生徒たちからすれば、「楽しい時だけ来て‥」「授業出ないのに、上から目線で話してきて‥」と、彼の言動は正直ムカつくこ

とが多かったと思います。

しかし、それとともに「だから仕方ないよね」で、終わらせることではないとも考えます。

みなさんお分かりのように、このトラブルの原因は『マス掴み』にあるわけではないですよね。

このトラブルの原因は、野外学習へ参加する前にA君に対して、そして他の生徒たちに対して、どのような活動を目指すのかとい

う共通の目標設定がなされていなかったというところにあると考えます。

 

前回までにお話してきたように、Aくんには「ぜひ参加しよう」と勧めるとともに、「みんなと一緒に野外学習に行くというのは、家族で行くキ

ャンプとは何が違うと思う?」と、考えさせたいと思います。

これも、言わばソーシャルスキルトレーニングの一つと言えるかと思います。

「家族で行くときに疲れたら、おとうさんやお母さんが荷物を持ってくれるだろうけれども、今回は自分で何とかしなければならないよね」

「飯盒炊爨の担当になったけど、何か不安なことある?」

「君はキャンプへ行っているよね。ハイキング等でみんなにアドバイスしてあげられること、何かある?」

といったように、事前に『集団の中の自分』を意識づける指導をすることが大切と考えます。

それは、よく行われる『持ち物確認』『日程確認』といったことと同じように大切ではないでしょうか?

 

その一方、他の生徒たちにも「欠席が多いAくんが野外学習へ参加する。みんなと、今まであまり一緒にいなかったから、気持ちがうまく伝わら

なくてトラブルが起こるかもしれない。どうすればいいのだろう?野外学習へ行く前に、何かやっておくといいことってあるかなぁ」と問題提起

をして、生徒たちに事前の対応や当日の対応について考えさせることは肝要と考えます。

初めは、「面倒くさいなぁ」「都合のいい時だけ来て、勝手だよなあ」と、A君に対してマイナスの思いを抱いている生徒も、おそらくいること

でしょう。

しかし、こうした働きかけをすることで、まずは ① 他の生徒たちが、Aくんのことを意識するようになる ことを目指したいと思い

ます。

今までの体験から、欠席が多い生徒が行事等に参加すると、『お客さん』扱いだった事例をよく見てきました。

『お客さん』扱いは、他の生徒たちの腰が引けていますから、Aくんがどのような言動をしてもスルーされて、大きなトラブルが生じることは少

ないでしょう。

しかし、そうした場合には『Aくんが参加した』という状況は一過性なことで終わり、Aくん自身にとっては心に残るものとはならず、他の生徒

たちにとっても、相変わらずAくんが自分たちにとって級友であるという思いは生まれてこないと考えます。

 

では、① 他の生徒たちが、Aくんのことを意識するようになる の次の段階は?

次回、考えていきます。

 

こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキの練習をしたりする会【コミュニケーションカフェ】を開いて

ます。

リアルでもOnlineでも開催しています。

詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。