不登校について考えましょう ⑬自己肯定感の育て方ーリスクを引き受ける覚悟

(ポルトガルの旅② 写真は、大航海時代にマザランたちを見送ったロカ岬の塔。『ここに地果て海始まる』のレリーフがあります)

現在『不登校』について考えています。

第1回は、 「様子を見ましょう」とはどういうこと?

第2回は、 気持ちは、言葉にしなければ伝わらない

第3回は、 子どもや保護者と世間話ができる関係づくり

第4回は、 たくさんの子どもたちが、学校へ行っていないようだけど、どうなってるの?

第5回は、 不登校の理由は、不登校児童生徒自身でも分からない (不登校の特徴①)

第6回は、 不登校の理由は千差万別・十人十色 (不登校の特徴②) について考えきました。

第7回は、 不登校の子どもたちの悩み について考えました。

第8回は、 「不登校」の子どもたちは、学習の遅れを心配している について考えました。

第9回は、 「ひきこもり」になるのでは?という不安 について考えました。

第10回は、 不登校の子は社会性が育ちにくいー思考の偏りの怖さ について考えました。

第11回は、 「なんて」という言葉のもつネガティブな響き について考えました。

第12回は、 自己肯定感の芽生えーぼくを大切にしてくれた について考えました。

そして、今回は前回の 「自己肯定感」が芽生えた後の育ち方 について考えていきます。(育て方ではなく、あくまでも子ども主体

の育ち方 として考えていきます)

 

野外学習に参加する中学2年生とのかかわり

(以下の話は、おそらく以前にもお話したことではないかと思いますが、今回は自己肯定感という切り口で考えてみてください。)

Aくんは、発達障害傾向が強く、学年や学級の仲間とのトラブルがよく起こります。

小学校の時には、保育園時から一緒に過ごしていた子が多かったので、Aくんが何か変わったことをやっても、大半の子が「あっ、またAちゃんが何か変なことをしている。でも、いつものことさ」ということで、何とか治まっていましたが、中学校ではAくんのことをよく知らないもう一つの小学校の子どもたちが、ことあるごとに「先生、Aくんが授業中に変なことをしてきます」と言い、学級の問題となっていました。そこで、Aくんは「怒られるから、学校へ行きたくない」と言い始め、お母さんもそうしたことの対応に疲れてしまい、欠席がちとなっていました。そして、2年生となり家庭訪問に来た、新しい担任の先生から「夏休みの野外学習」の説明を聞き、Aくんの気持ちが少し変わってきました。Aくんの家では、毎年家族全員でキャンプに行っているので、Aくんはキャンプ生活に慣れています。また、今年のクラスには幼馴染のBくんもいて、「一緒に野外学習に行こうよ」と誘ってくれました。お母さんは「ぜひ行ってほしい」と思っていますし、その話を聞いたお父さんやお兄さんも「キャンプ得意だから行っておいでよ」と言ってくれました。そんな周囲の励ましによって、Aくん自身も「行ってみようかなあ」と思うようになってきました。幸い、担任の先生がAくんとBくんを同じ班にしてくれ、その班の他のメンバーも優しい子たちだったので、「事前指導」「班での準備活動」のため、こわごわ登校したA君はほっとして帰宅しました。そんな良い雰囲気の中で野外学習が始まりました。一日目のキャンプファイアーや飯盒炊飯は何もトラブルが起きませんでした。それどころか、Aくんが火を起こすのが上手だったので、他の班からも「Aくん教えて」と声がかかり、Aくんは引っ張りだこでした。その姿を見て、担任の先生は「よかったなぁ」と、しみじみ思いました。二日目のハイキングも同じ班の疲れている子の荷物をAくんが持ってくれて、みんなでゴールすることができ、担任の先生は少し感動していました。しかし、トラブルが三日目の「マス掴み」で起こりました。生徒たちが、川で泳いでいるマスをつかみ、それを焼いて食べるという活動ですが、泳いでいるマスを素手で捕まえるということはかかなり難しいです。ここでも、Aくんが活躍していました。マスの掴み方お、捕まえたますに塩をふり焼くという手順でも、みんなのリーダーとなつていました。しかし、日頃から他の生徒たちとそんなにコミュニケーションをとったことのないAくんは、周囲の子との言葉のキャッチボールや相手がどのように思っているかを考えることが苦手です。そこで、ついつい「どうしてそんなことできないの?」とか「さっき言ったのに何で?」と上から目線で話してしまいます。それが度重なってくると、黙っていた他の生徒たちもイライラしてしまい、とうとう2,3人の生徒が「いつも学校に来ていないヤツに言われたくないよ」と言ってしまいました。すると、みるみるAくんの顔色が変わり「帰る」と叫び始めてしまいました。多くの先生が駆け付け、他の場所へ連れていき落ち着かせようとしましたが、Aくんの気持ちは治まらず、お母さんに迎えに来てもらい、帰宅することになりました。バタバタと慌ただしい先生たちの動きを見て、一部の生徒が「言われたくない」と言った生徒たちに、「あんたたちが余分なことを言うから」と言いました。言った生徒たちは「俺たち悪者?」とちょっと落ち込んでいました。

いかが思われましたか?

この出来事の中で、「悪者」っているのでしょうか?

いいえ、私は誰も悪くなかったと思いますし、こうした結果となっても、Aくんが野外学習に参加したことは良かったと思います。

飯盒炊飯で、ハイキングで、そしてマス掴みで、周囲の生徒たちから、Aくんは十分に褒められました。Aくんの自己肯定感は今まで

で最高くらいに高まったと思います。

今までAくんが認められるというのは、先生や家族からだったのではないでしょうか。

しかし、今回は違います。

同じ年齢の子どもたちから、認められて感謝されるというのは、A君のそれまで生きてきた中で、そんなにあったことではないでしょ

う。

ですが、残念ながら最後までハッピーではなかったということです。

最期に、Aくんとしてはとても辛い思いをしたかもしれません。

日頃の言動から知的に問題がないと思われるAくんですから、薄々「学校へ行っていない」というひけめを感じていると考えます。

それを、スパっと射抜かれてしまったわけです。

辛かったことでしょう。

ですから、手放しでAくんの自己肯定感が育ったとは言えないでしょう。

しかし、みんなから認められたという感覚は、A心の中に栄養として溜まったと思います。

自己肯定感とは、このように認められて高まったり、非難されて揺らいだりするものではないかと考えます。

この体験から、Aくんは自分で「翌年の修学旅行に参加するかしないか」を考えることになると思います。

判断は、もちろん彼自身が行うことですが、彼の成長に意味ある判断となるようにサポートしていきたいです。

 

こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキルの練習をしたりする会【コミュニケーションカフ

ェ】を開いています。

リアルでもOnlineでも開催しています。

次回のリアルは、10月17日に行います。

詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。