子どもたちの置かれている状況 6
彼女が通所している適応教室(すなわち私が勤務している)での生活は、いわば仮の世界です。どんなに毎日通所したり、子ども自身が気に入っていたとしても、彼女の籍は中学校にありますし、そこの卒業証書をいただいて卒業していくわけです。そして、遅かれ早かれ彼女はリアルな世界へ戻っていくわけです。もちろん、ここへ通所している子どもたちのすべてが、中学校卒業を機にリアルな世界へ旅立っていくわけではありません。いまだその機が熟せず、もうしばらくフリースクール等でその時を待つ子どももいます。私は、「その時」は人それぞれと考えます。しかし、彼女の旅立つときは、今だと確信に近いものが私にはありました。
彼女は、どうして不登校になったのでしょうか。もちろん、先にお話ししたように「友だちとの確執」が主要な原因と考えられています。しかし、彼女と多くのことを話すにつれて、「果たして、それが原因?」と思えてなりません。「友だちとの確執」は、きっかけにすぎなかったのではないでしょうか。威勢のいい見かけの元気さの裏にある「自己肯定感の低さ」、それはむしろ「自分自身への不信感」と言ってもよいくらいのレベルに思えます。そして、それは「他の兄弟姉妹ほど、母親に愛されていなかった(と、彼女が思っている)」小さな頃の寂しかった体験から生じているのかもしれません。
私は彼女と親しくなればなるほど、一人の人を間理解しようとすることの難しさ、いえ「理解する」という傲慢さを感じるようになりました。