子どもたちの置かれている状況 5

彼女は「進路希望調査用紙」をひらひらさせながら、「この前先生が家へ来て、進路を考えていこうねって言うけど、どうしていいか分からない」と話し始めました。「どうせ学校へ行ってないし、勉強分からんし…」と、「ムカつくおやじ」事件の元気さとは一変し、そこには自分に全く自信がもてない、不安でいっぱいの少女の姿がありました。「親はどこでもいいから高校へ行けと言うけど、行けるところないし。通信は絶対に続かないと思うから嫌だ(続けたいという気持ちがある!)」と、彼女なりになかなか的確な自己分析をしていました。そこで、彼女の強み(ストレングス)を探すことにしました。彼女は「私にはいいところなんてない」と断定しますが、そんなことはありません。この頃は表情も豊かで、乱暴な言葉ながら周囲の人に挨拶をすることもでき、他の子どもたちに結構優しく接する場面も見かけられました。そこで、「何かなりたいもの、やりたいことはないの?」と尋ねると、「ない。だって無理だから」と言います。しかし、時間をかけて訊いていくと「髪の毛いろいろやるのが好きだから、美容師になりたい」と話し始めました。

そこで、「美容師いいじゃん。だけど、どうするとなれるのかな」と彼女と一緒にネットで調べていると、「2年のときに職業体験で美容院へ行った」と言います。さらに「楽しかった」とも言います。

これは、彼女がリアルな世界で生きていく大きなきっかけになるのではないでしょうか。

さらに、つながりが希薄になっていた中学校(担任の先生は好きです)との関係を、再構築するきっかけにもなるでしょう。

そして、何より彼女の低くなっている自己肯定感を高めるための大きな一歩になると考えました。