【友だちという呪縛~ボッチ上等~】12 「ハワイは二人で行って。僕は部活」
現在、私はスクールカウンセラーとして勤務しています。
中学校の教員として、また大学の非常勤講師として、若い世代と長い間関わり合ってきましたが、今目の前にいる子どもたちの抱えている問題は、
決して【子ども】だけの問題ではなく、私たちの社会が抱える問題そのものではないでしょうか。
そこで、『子どもたちの相談』を切り口として、私たちを息苦しくさせている『何か』に迫っていきたいと考えます。
前回、『未成年(18才以下、20才以下のどちらで考えても結構です)の死亡原因の1位は何だと思いますか?』と、みなさんに考え
ていただいた質問の答え合わせをしました。
第1位は【自死】でした。
とてもショックを受ける事実です。
しかしながら、ここでみなさんと考えたいことは、単に「子どもたちがかわいそう」ということではなく、「どうして、子どもたちが死を選ぶの
か?」という原因です。
前回お話したように、どうして「辛い。助けて」と言わないかという理由です。
さらに言うならば、「子どもたちに生きづらさを感じさせているものは何か?」です。
そこで、【自分の価値が周囲から低減されていることを言うのは、死ぬよりも辛い】とのアドラーの言葉(嫌われる勇気より)を参考
にして、自分の存在を否定されているということを、周囲の大人などに打ち明けて、「私を助けて」と訴えることができない子どもたちの背景・環
境について考えていくことにしました。
ちょっとお話が長くなるかと思いますが、お付き合いください。
子どもたちばかりでなく私たち大人にとっても、大切な問題と考えるからです。
子どもたちの状況1 思春期の発達段階について
思春期の子どもたちの特徴としては、大きく分けて次の3点があげられます。
① 身体の急激な変化
みなさんは、いわゆる【思春期】は何歳から何歳と思われますか?
以前は、「中学生のころ。だから中学生って反抗期で育てるのが難しい」という声をよく聞きました。
もちろん、個人差のあることですから、一概には言えませんが、女子の場合には小学4,5年で該当する場合もありますし、男子の場合には「身
長が伸びなくなった頃」と考えて、概ね正しいのではないかとも思います。
さて、この時期の大きな特徴としては、みなさんもご存じのように、身体が大きくなることとともに、男性女性という【性的成熟】が始まりま
す。
異性の親にとっては、なかなか扱いに苦慮する場面も出てくるかと思います。
② 心の急激な変化
前述①も親にしてみると、取り扱いに難しいかと思いますが、さらに気を遣う場面(腫れ物に触るかのように気を遣われている)があるのは、こ
のことがらかと思います。
先日も、あるお母さんからつぎのような嘆きの声をうかがいました。
「うちの子は中2の男子です。小5のときに、仲良しの○○くんのご家庭が夏休みにハワイへ行かれて、うちの子はものすごく羨ましがって。○○
くんの家はハワイだよ。ハワイだよと言っていました。おまけに、お土産をいただいたので、興奮していました。そこで、父親とも相談して、今
年は我が家もハワイへ行くことにしました。来年は受験ですし。そこで、息子に『今年の夏はハワイへ行くよ』と言ったところ、『二人で行け
ば。僕は部活へ行くし』と言いました。あの子が行くと言うから、頑張ったのに‥」と嘆かれました。
そうなんですよ
もったいないですが(私ならば、もちろんハワイへ行きますが)、彼の中で物事の価値が変わったのでしょうね。
今の彼には、ハワイよりも部活動の方がずっと魅力があるのでしょうね。
さらに付け加えるならば、『家族と一緒のハワイよりも、友だちと一緒の部活』なんでしょうね。
お母さんは、とても残念がっていましたが、これが発達段階というものと考えます。
そして③は【他者との関係性の変化】です。
次回、考えていきましょう。
こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキルの練習をしたりする会【コミュニケーションカフェ】を開いてい
ます。
リアルでもOnlineでも開催しています。
詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。