未来の教員を目指す学生と関わって4部⑤
この連載の第1シリーズとして、発達障害を中心とした【学級・学校に適応することが難しい子どもとの係り】について、また第2シリ
ーズとして【学力差がある集団への係り】について、第3シリーズでは、【一見仲良さそうに見えるなれあい集団内部への係り】につい
て、教員を目指す彼らが抱えている不安について考えてきました。
現在の第4シリーズでは、『教職を目指す学生が考える【理想の教師像】』をスタートとして、教育相談の持ち方などについて考えてい
きます。
さて、『教職を目指す学生が考える【理想の教師像】』アンケートについては、以前にご説明しました。
そして、このアンケートからは、なかなか興味深い結果が見えてきました。
1 第1位となったのは、2 悩みを抱えている子どもへ寄り添う気持ちが強い でした。
とりわけ、あと数か月で大学を卒業し、教員としての人生を始める学生にとっては、『 悩みを抱えている子どもへ寄り添う気持ちが強
い』教師像は、明日の自分そのものであるとともに、自分自身の不安な気持ちの投影とも考えられます。
そして、彼らの不安な気持ちの要因の一つ(主要因と思いますが‥)は、『彼ら自身の優しさ』にあるように考えます。
2 『彼ら自身の優しさ』が、不安やストレスの要因となることの一つの表れ
大学の授業で、『自己肯定感』を高めるスキルの一つとして、『アイメッセージ』のロールプレイをした際に驚きました。
それは、『友人が約束時間に現れず、長時間待たされていた。そこへ、友人があたふたと現れた。あなたは、どのような対応をするか』
という課題でしたが、初めから『待たせた相手に対しての非難』等ということが、全くなかったのです。
むしろ「相手にも事情があるから、仕方ないよね」「相手が遅れてくるくらい、別に問題ではない」「私が少し我慢するだけで済むなら
大したことじゃない」といった反応ばかりでした。
むしろ「人を待たせるのは良くない」と、当初ワークシートに書いていた学生は、授業後に「私は、相手の気持ちを考えずにひどいこと
を言ってしまった」と反省を書いていました。
これって、おかしくありませんか?
私は、おかしいと思います。
実は、数か月前にも似た体験をしました。
私の授業を受けている女子の学生の、授業後の振り返りシートにこんな悩み相談が書いてありました。(このところ、振り返りシートに
は授業内容のまとめよりも、人生相談が多くなっているので、結構大変です‥)
『私の友人に、待ち合わせにいつも遅れてくる人がいます。今までは、いいよと言っていたけど、それは彼女のために良くないのでは?
と思い、遅れずに来てねと言ったら、そんなの仕方ないじゃんと言われて、周りにいた子たちもそんな言い方するって、ひどいよねと言
ってきて‥私が、まるで空気読まない人って感じで。ちょっと落ち込みました。私が間違っていますか?』
みなさん、どう思われますか?
彼女は、何か間違っていたのでしょうか。
いいえ、彼女は至極まっとうなことを言っただけだと思います。
では、なぜ彼女は非難されたのでしょうか。
それは、周囲の価値判断の基準が、【やさしさ?】にシフトしているからと考えます。
そして、『誰も傷つけたくない』風潮が蔓延している中で、正しいことを主張したからです。
今、学生さんたちの『授業案』を採点していますが、ここでもよく似た空気を感じています。
ハピネスでは、こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキルの練習をしたりする会【コミュニケー
ションカフェ】を開いています。
リアルでもOnlineでも開催しています。
詳しくは、このHPのトピックスをごらんください。