【友だちという呪縛~ボッチ上等~】14「幼稚園から、一緒にお獅子やっていた」という密な関係
現在、私はスクールカウンセラーとして勤務しています。
中学校の教員として、また大学の非常勤講師として、若い世代と長い間関わり合ってきましたが、今目の前にいる子どもたちの抱えている問題は、
決して【子ども】だけの問題ではなく、私たちの社会が抱える問題そのものではないでしょうか。
そこで、『子どもたちの相談』を切り口として、私たちを息苦しくさせている『何か』に迫っていきたいと考えます。
「私を助けて」と訴えることができない子どもたちの背景・環境について考える。
子どもたちの状況1 思春期の発達段階について
思春期の子どもたちの特徴としては、大きく分けて次の3点について前回まで考えました。
① 身体の急激な変化
② 心の急激な変化
③ 他者との関係性の変化
今回は、現代の子どもたちの対人関係力の変容について、考えていきます。
子どもたちの状況2 対人関係形成力の低下
私が教員となった遥か昔でも、子どもたちはさまざまな問題を抱えていました。
と言うよりも、とにかく荒れていました。
とりわけ、私が勤務していた学校は事件が多発しており、「校内暴力」の風が吹き荒れていました。
職員室前の廊下を自転車が走り、運動場をバイクが走り、学校を抜け出す生徒を追いかけて校門を飛び越え(彼は飛び越え、私はよじ登り)、始業前
から授業の用意など持ち、教室階へ上がったら、下校過ぎまで降りてこず、校舎間を牛乳瓶が投げられ‥と、今では想像できないことばかりでした。
今教えている大学生たちに話すと、「そういうことはテレビドラマの中だけと思っていました」と、大変驚きます。
いえいえ、実際に起こった出来事でした。
教師であった私としては、なかなかハードな日々でした。
しかし、その時の生徒たにちとっては、大変ばかりではなかったようです。
その当時の教え子さんたちと会った際に、当時の人間関係の密度の濃さに、今さらながら気づかされることがしばしばあります。
例えば、ある授業中に生徒たちの目が、教えている私や背後の黒板よりも、上にいっているように感じて、黒板の上を調べたところ、マンガがその内
容が生徒たちに分かるよう開けておいてあったのです。、
「だれ?これをやったのは?」と尋ねても、もちろん誰も名乗り出てきません。
そこで、「こんな状態では授業はできない」と言い自習にし、私も教員の机で勉強していました。
誰一人声を出すことなく、教室は異様に静まり返っていました。
終了のチャイムがなったので、「次回は授業ができるといいですね」と言い、私は職員室へ戻ってきました。
この出来事が起こったのは3限目でしたが、昼食後に2人の男子生徒がやってきて、「マンガを置いたのは、俺たちです。すみませんでした。みんな
のために、次は授業をしてください」と謝罪に来ました。
後で聞いたところでは、そのクラスの多くの生徒たちから「授業どうするの」とか「先生怒ってるよ」と言われたそうです。
二人の謝罪に対して「考えのない行動が、こうして多くの人に迷惑をかけることを忘れないように」と注意し、この一件は終了しました。
ですが、この出来事から、私は多くのことを学びました。
謝罪に来た二人は、私の予想通りのメンバーでした。
しかし、そうしたことよりも何よりも、クラスの他の子たちが「誤ってきて」という圧力を、彼ら二人にかけたということに驚きました。
二人は、その当時のいわゆるヤンキーです。
一見すると、クラスの他の生徒たちとは、明らかに力関係が違います。
それにも関わらず、彼等に「謝罪」を主張できたのは、幼稚園保育園時代からのつながりがあったからでした。
「同じ町内で一緒にお祭りのお獅子をやっていた」「小学校のときから同じスイミングに通っていた」「小さな時からよくお泊りしていた」等とい
う、教師が学校が知らない、密なプライベートの関係が彼らの間には会ったからでした。
「これは強いなぁ」と思いました。
良い時代、牧歌的な時代だったと言えることでしょう。
しかし、今それはできません。
なぜでしょうか。
次回、考えていきましょう。
こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキルの練習をしたりする会【コミュニケーションカフェ】を開いてい
ます。
リアルでもOnlineでも開催しています。
詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。