【彼は実験助手】コミュニケーションが苦手な人との上手な関わり方【発達障害(碍)傾向に目を向けて】
どのように関わっていくか①(以前のブログをご覧ください)
どのように関わっていくか②
ある中学1年生のケースです。(以前のブログをご覧ください)
『授業中に席を立ったり』『イライラすると周囲の生徒に手を出したり』といった状況から、「発達障害傾向がある子かな?」という予
想はつきますよね。
ここで忘れてならないことは、クラスメートも親も先生も、そしてもちろんその子自身も困っているということです。
ではどうすればよいのでしょうか。
第一に考えたいことは、この子自身への対応です。
このイライラ度の限界は、個人によっても、その場の状況によっても異なると考えます。
それを、「みんなだって我慢している。じっとしていなさい」は、無理なのです。
その子は、イライラする感度が敏感と考えると、その子の苦労を少し理解できませんか?
では、どんな対応策をとりましょうか。
よく言われる『シェルター・クールダウンの場所を設定する』という方策はどうでしょうか?
その前に、こんな話をお伝えしたいです。
私の長い教員歴の中で、「この先生にうけもってもらえたら、子どもは幸せだろうなぁ」と感じた先生が、何人かいます。
その中の一人です。
先生は、外国籍の子どもが多い小学校の5年生(単学級)を担任していました。
そのクラスに、発達障害傾向のある男子児童がいました。
彼は、事例②で取り上げたように、授業中落ち着きがなく、周囲にちょっかいをかけることがたびたびありました。(もちろん、彼にし
たら迷惑をかける気持ちはなかったのですが、周囲は残念ながら『迷惑』と受け止めていました)
理科の実験の最中にも、他のグループにちょっかいをかけに行ってしまいます。
そこで、先生は「どうして、そんなことをするのか?」と、彼をじっくりと観察しました。
その結果、「彼は理科が得意で、実験は大好き。だからこそ、もたもた(彼には、そのように見えます)やっているとイライラして、他
へ行ってしまう」のではないかと、考えられました。
そこで、先生は彼を『実験助手』に任じられました。
そして、理科の実験のある前日に、彼と一緒に実験の準備(各班ごとの試験官やビーカーの数を用意するなど)をしました。
当日、彼はすでに段取りを把握しているので、『実験助手』として、実験がうまくいかない班へ赴き、手助けをするわけです。
とても退屈してイライラしている暇はありません。
級友たちも、「○○ちゃん、ちょっと教えて」と呼ぶので、彼は大忙しです。
ここでは、得意なことを生かして、級友から信頼され生き生きと活動する彼の姿がありました。
また、級友にとっても「落ち着きがなく迷惑なヤツ」とは異なる彼を知ることができました。
もちろん、全てがうまくいくわけはなく、相変わらず周囲とトラブル彼の姿もありますが、「○○ちゃんは迷惑かける時もあるけど、助
けてくれる時もあるよね」という彼を見る目が育っていくことで、「みんないいところも、残念なところもあるよね。みんな一緒だね」
という、お互いを認め合う雰囲気が高まっていくことが、彼ばかりでなく誰にとっても行こ居心地の良いクラスになっていくのではない
でしょうか。
次回は、周囲への対応について考えてみたいと思います。
こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキルの練習をしたりする会【コミュニケーションカフェ】
を開いています。
リアルでもOnlineでも開催しています。
詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。