何ができるだろう③韓流は不登校に効く?④
事例1 不登校の小学4年生の男子
彼は、小学校2年生の後半から、学校を休み始めました。
保護者から(私が当時勤務していた)適応指導教室への通所依頼があり、彼は通い始めましたが、他の子どもたちとほとんど話すことが
できず、大人である相談員と一緒に昼食をとったり、バドミントンをしたりしていました。
しかし、半年が過ぎたあたりから、少し様子が違ってきました。
相談員とバドミントンをするということは、変わりませんでしたが、昼食は同じ学年の子たちと一緒に食べるようになっていました。
彼の心境にどんな変化があったのでしょうか?
何が、彼に影響を与えたのでしょうか。
それは、彼を中心として動いていた母親に生じた変化と関係があるのではないかと考えました。
すなわち、今まで100%息子へ向かっていた母親の関心が、韓流という別の方向へ向かった⇒彼が自分で意思決定をする場面が増えた⇒
彼の思考や感情に他の要素がはいる余裕ができた⇒他の子どもと関わるようになった といった流れを考えてみました。
実際に、彼がどのように考えたのかは、私たちには分かりません。
ここで大切にしたいことは、「○○が不登校の原因だ」という原因の解明よりも、『他の子どもと関われた』という事実を受け止め、彼
に次のステップを提示することと考えます。
体験された方は、お分かりのように、不登校にはさまざまな要素が絡み合っています。
私が、適応教室でインテーク(受理面接)した件数は、年間150件程度でしたが、「デブと悪口を言われた」といったステレオタイプな
ものは、滅多にありませんでした。
また、マスコミ報道などで「いじめによる不登校」といった紋切り型で語られるようなケースも、そんなに多くはありませんでした。
それよりも、日常生活での気持ちのすれ違いや、物事のとらえ方の違いや子ども本来の気質によるものが、多くありました。
それだけに、マニュアル化ができず、一つ一つの事例と根本から付き合っていくことが必要となってきます。
今は、「学校へ登校させるだけが目的ではない」と文科省も社会全体も考えており、その寛容性の高まりは子どもたちにとっては、生き
やすくなっているかと思います。
しかし、人間本来の社会性を育てるという要素が薄らいでいくことは、子どもの長い一生にとっていかがなものかという危惧を感じてい
ます。
また、この問題については、違う切り口で考えていきます。
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