不登校について考えましょう 22  不登校から見えてきた『母と娘の共依存』?

(スクールカウンセラーとして勤務している小学校で、先日作品展がありました。子どもたちの生き生きとした活動を見られました ワクワク)

今まで、『不登校について考えてきました。

【今までに考えてきたことー不登校の基礎知識】最新データを文科省が発表!

『不登校』に関する基本的なことがら(1年間に、300000人超えの小中学生が不登校!など) 

「不登校の理由は、100人いれば100とおり」。

でも、大まかに【学校の状況に原因】【家庭環境に原因】【本人の質に原因】が考えられる。 

【今までに考えてきたことー不登校の事例①②③】

事例① 中学生 夏の野外学習でのトラブル

 学校を休みがちだった生徒が、担任や級友の後押しで、何とか野外学習に参加し、生徒自身も充実した生活を過ごしていた。

しかし、最終日の『マス掴み』の際に、元来コミュニケーション下手であるため、周囲への言葉かけからトラブル発生し、急遽帰宅

することに‥

この事例で考えたこと  発達障害の特性・コミュニケーションの取り方・緊急避難・SST

事例② 小学生 ママとおばあちゃんの関係を憂える

おばあちゃんと児童、おばあちゃんとママとの間での会話の些細な言葉に敏感に反応して、「ママとおばあちゃんがケンカすると

いけない」と心配し、学校へ行けなくなった(家を留守にできない‥)

この事例で考えたこと    周囲への気遣い ➡ アドラーの考え方・こころの居場所

事例③ 小学生 同じことができない児童への反感

大好きな虫に集中してしまい、午後の授業へ戻れない児童と付き添った担任に対して、他の児童たちが見せる反感や、心無い言動

の結果、登校できなくなってしまった‥

この事例で考えたこと   インクルーシブ教育・該当児童ばかりでなく、クラス全員を大切にする

以上の事例について、考えてきました。

そして、今回は少し雰囲気が異なる事例について考えていきます。

事例④ 中学生 不登校への困り感がない母子(再掲ですので、字を小さくしました)

中学1年のAちゃんは、父親の転勤で両親・高校生の姉とともに東京から引っ越してきました。転校先の中学に登校していましたが、2か月ほど経ったところで、休みがちとなり、半年経った今では完全に登校しなくなりました。担任の先生は「転校生へのいじめがあったのでは?」と思い、(Aちゃんは自分から話すタイプではないのですが)同じ班の子や時々話していた子、同じ官舎に住んでいる子たちにいろいろ尋ねてみました。また、家庭訪問をして、Aちゃんと話してみましたが、いじめのような話題はAちゃんからもお母さんからも出てきませんでした。本人はむしろ、学校へ行けないということで焦ったり、落ち込んだりすることもなく、無理に明るくしているわけでもなく、お母さんも自然体で「学校へ行ってほしいのですが」と言いながらも、親子で買い物やライブに仲良く行っていることを話してくれました。いろいろ話していると、お母さんが「私の友達は東京の人ばかりで、なかなか近くにできなくて、さびしいですね。お姉ちゃんは家族の中でさっさとお友達をつくって、遊びに出かけたりしてますが。妹はおねえちゃと待ち合わせてドームのライブへ行きましたし、家族みんなでは出かけるのてすが…」といった近況を話してくれました。

前回、紹介した事例ですが、どんなことを思われましたか?

今までの事例とは、ちょっと違う気がしますよね?

私は、このケースの大きな特徴は、『保護者に困り感がない』ことではないかと思います。

今までに述べてきた3つの事例は、子どもの状況や家庭の様子、学級の様子などさまざまでしたが、保護者は「どうしたら、この子

は学校へ行くようになりますか」と、憔悴した表情で尋ねられました。

この事例のお母さんも、もちろん「何とか学校へ行かせたい」と言われますし、何よりも「不登校で困ります」とわざわざスクール

カウンセラーを尋ねていらっしゃったのですから、もちろん何とかしたいと思われていることに違いありません。

では、事例①②③と、④の違いは何でしょうか。

事例④のお母さんと相談を続けていく中で、ふとこんなことを思いつきました。

『不登校のわが子が登校するようになったら、保護者はどう思うだろうか?どうするだろうか』

事例①の保護者は、喜ばれることと思います。登校することで、「トラブルがおきるのでは?」という不安感はあるでしょうが、「何とかみんなと仲良くして、よい学校生活をおくってほしい」と思われることと想像できます。

事例②の保護者も、お母さんとおばあちゃんの関係性の改善を図るという難題はあるものの、「この子が学校へ行くようになるのなら」と頑張られるでしょうし、登校できたら大喜びされるのではないかと思います。

事例③の保護者も、紹介した小児心理の医師の助言も受けて、カウンセリングとソーシャルスキルトレーニングに励む一方、担任の先生は学級の雰囲気づくりに取り組み、彼の登校をみんなで支える方向に動き始めました。

しかし、事例④の保護者は、不登校中のAちゃんが登校するようになったら、どうでしょうか。

もちろん、「登校できてよかったです。うれしいです」と、言われることでしょう。

でも、でも‥‥‥それは本音でしょうか。

いえ、お母さんがウソを言っているというのではありません。

きっと、お母さんはそのように考えていらっしゃることでしょう。

しかし、その奥の奥の深いところでは違うのではないでしょうか。

なぜならば、Aちゃんが登校してしまったら、お母さんは困りませんか?

Aちゃんが登校してしまったら、お母さんは「昼間話す相手かいない」「一緒に買い物に行く相手がいない」「一緒にコンサートへ

行く相手がいない」‥となりませんか?

すなわち、お母さんはAちゃんを『友だちの代わり』にしているのではないかということです。

その点、お姉ちゃんは『さっさとお友達をつくって遊びに行って‥』ということは、上手に逃げたのではないでしょうか?

ある意味、Aちゃんは逃げ遅れたのかもしれません。

お母さんは、そんな意識はなくても『学校へ行きなさいと言いながら、その足にしがみついている』のかもしれません。

しかし、Aちゃん自身もその関係を嫌がっているようには見えません。

お母さんとAちゃんの両方がお互いを必要としている(過度に)、お互いにもたれ合ってイるーそんな関係を『共依存』といいます。

次回、このことについて考えていきましょう。

 

こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキの練習をしたりする会【コミュニケーションカフ

ェ】を開いています。

リアルでもOnlineでも開催しています。

詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。