【子どもの心 若者の心 そして‥】3 『子どもを大切にする』とは生きる力を育てること

前回は、以下の事例①を基にして、中学生の心理について考えました.

①『発達障害傾向のあるAくんが、学校の昼の休憩時間のときに、大好きな虫(彼は虫オタク)を発見して動かなくなってしまいました。5限開始のチャイムがなったので、担任の先生はしばらく付き添い、その後Aくんと一緒に教室へ戻りました。すると、生徒たちの誰も何も言いませんが、何となくイヤーな雰囲気が教室内に漂っていました。担任の先生は、「しまった」と思いましたが‥』

その際に、下記の3つの視点から、みなさんにも考えていただきました。(詳細は、前回のブログをご覧になってください)

①この事例の問題点は、何だと思いますか?

②あなたが担任の先生ならば、どのように行動しましたか?

③また、これからどのように行動しますか?

 

いかがだったでしょうか。

この事例は、集団(この事例では学級)の中での【個の尊重と集団の協調性】の兼ね合いの難しさを、私たちに考えさせます。

きっと昔は、否応なく『集団の決定に従う』だったと思いますが、今はそうした時代ではありません。

しかし、だからと言って集団で生活するためには、その集団を維持していくための協調性も必要となります。

なかなか、簡単なことがらではないのです。

 

例えば、こんなケース②もありました。

②「中学2年生男子のAくんは、1学期途中から休みがちとなり、2学期には欠席が続いていました。10月下旬に合唱コンクールがあり、担任の先生とお母さんから「歌うのは無理としても、クラスのみんなが歌う様子を見に行こう」と誘われて、当日お母さんと一緒に保護者席で見学していました。クラスのみんなは気づいていましたが、何も言いませんでした。12月となり、終業式の前に、クラスでお楽しみ会を行うこととなりました。お母さんから、その話を聞いた彼は「行ってみたい」と言いました。その話は担任の先生に伝わり、「Aくんもお楽しみ会に参加したいようだ」と、みんなに報告がありました。すると、全体の場では何も意見がなかっったのですが、「ずるいよな」「授業は休むのに、こういう楽しい時だけ来るんだ」といった不満が、聞こえてきました。

さぁ、①の考え方を生かして、②も考えてみましょう。

 

【個の尊重と集団の協調性】を、基本として考えていきます。

まず、個の尊重について考えます。

この場合の【個】とは誰を指すと考えますか?

休みが続いているAくんが当てはまりますが、それだけでしょうか?

クラスの他の子どもたちの一人一人も、ここに該当しますよね。

Aくんの個性を尊重すると同じように、他の子どもたち一人一人も大切にするべきではないでしょうか?

そうした考えがベースにないと、他の子どもたちから「Aくんだけが特別扱い」といった不満が沸き起こるのは当然と考えます。

しかし、常日頃から一人一人の心の中に「先生やクラスのみんなから大切にされている」という思いが育っていれば、Aくんへの不満はそんなに

大きくならず、むしろ「Aくんもぜひ参加するいいよね」といった雰囲気が生まれてきます。

 

では、ここで視点を少し変えてみます。

A君もみんなも大切にするとはどういうことでしょうか?

もちろん子どもたちの考えを理解し、その主張を認め、支援するといったことが考えられますが‥

それだけでしょうか?

本当に、子どもたちを大切にするとは、彼等に社会で生きていく力を身に付けさせることと考えます。

今回のAくんについても、同様のことが言えるのではないでしょうか。

すなわち、周囲の自分に対する気持ちを理解するとともに、自分自身が周囲のみんなとどのように関わり合うかについて、考えさせることが大切

と考えます。

さて、具体的にはどのようなことでしょうか。

こんなことって、体験されたことありませんか。

以前は、級友の気持ちを傷つけた子どもたちには、「自分がされて嫌なことを他のみんなにしない」と指導したものです。

しかし、この頃こうした言葉がけをすると、「ぼくは、そうしたことをされても全然嫌じゃない」といった類の反論が返ってきます。

そこで、いまでは「君と相手は感じ方が違うと思う。君が平気でも、相手が嫌だと思うことははしない」と指導するようになりました。

ここに、Aくんに話したいことのエッセンスが詰め込まれていると考えます。

周囲のみんなが、Aくんの良さを認めるとともに、A君自身も周囲の級友ま良さを認める そんな指導をしていくことが、真にAくんが学校で社会

で生きやすくなっていく すにわち、適応していくと考えるのです。

 

では、もう一つの集団の協調性については、いかがでしょうか。

このことについては、次回考えていきましょう。