不登校について考えましょう 23 子どもにとっての通過儀礼の必要性
(非常勤講師として勤務している大学で、季節外れの桜 四季桜 が咲いています)
今まで、『不登校』について考えてきました。
【今までに考えてきたことー不登校の基礎知識】最新データを文科省が発表!
【今までに考えてきたことー不登校の事例①②③】
事例① 中学生 夏の野外学習でのトラブル
この事例で考えたこと 発達障害の特性・コミュニケーションの取り方・緊急避難・SST
事例② 小学生 ママとおばあちゃんの関係を憂える
この事例で考えたこと 周囲への気遣い ➡ アドラーの考え方・こころの居場所
事例③ 小学生 同じことができない児童への反感
この事例で考えたこと インクルーシブ教育・該当児童ばかりでなく、クラス全員を大切にする
以上の事例についての詳細は、以前のブログをご覧ください。
そして、今回は少し雰囲気が異なる事例について考えています。
事例④ 中学生 不登校への困り感がない母子
(内容については、前々回・前回のブログをご覧ください)
このケースの大きな特徴は、『保護者に困り感がない』ことではないかと思います。
今までに述べてきた3つの事例は、子どもの状況や家庭の様子、学級の様子などさまざまでしたが、保護者は「どうしたら、この子
は学校へ行くようになりますか」と、憔悴した表情で尋ねられました。
この事例のお母さんも、もちろん「何とか学校へ行かせたい」と言われますし、何よりもわざわざスクールカウンセラーを尋ねてい
らっしゃったのですから、もちろん何とかしたいと思われていることに違いありません。
では、事例①②③と、④の違いは何でしょうか。
事例④のお母さんと相談を続けていく中で、ふとこんなことを思いつきました。
『不登校のわが子が登校するようになったら、保護者はどう思うだろうか?どうするだろうか』
事例①②③の保護者の方は、「よかった」と胸をなでおろして、不登校以前の日常生活へ戻られるのではないかと想像します。
(本来は、『登校出来たら、それでOK』とは考えていませんが、そのことはちょっと置いておいて)
しかし、事例④の保護者は、不登校中のAちゃんが登校するようになったら、どうでしょうか。
もちろん、「登校できてよかったです。うれしいです」と、言われることでしょう。
でも、でも‥‥‥それは本音でしょうか。
いえ、お母さんがウソを言っているというのではありません。
きっと、お母さんはそのように考えていらっしゃることでしょう。
しかし、その奥の奥の深いところでは違うのではないでしょうか。
なぜならば、Aちゃんが登校してしまったら、お母さんは困りませんか?
Aちゃんが登校してしまったら、お母さんは「昼間話す相手かいない」「一緒に買い物に行く相手がいない」「一緒にコンサートへ
行く相手がいない」‥となりませんか?
すなわち、お母さんはAちゃんを『友だちの代わり』にしているのではないかということです。
その点、お姉ちゃんは『さっさとお友達をつくって遊びに行って‥』ということは、上手に逃げたのではないでしょうか?
ある意味、Aちゃんは逃げ遅れたのかもしれません。
お母さんは、そんな意識はなくても『学校へ行きなさいと言いながら、その足にしがみついている』のかもしれません。
しかし、Aちゃん自身もその関係を嫌がっているようには見えません。
そんな関係を『共依存』と考えます。
※お母さんとAちゃんの両方がお互いを必要としている(過度に)、お互いにもたれ合っている関係
ちょうど今、教職課程で授業している学生たちに『不登校』『保護者との係わり方』について、授業しているので、このケースを事
例として紹介しました。
すると、「私もお母さんと仲良しで、一緒に買い物に行きますが、それは問題なのですか?」という質問がいくつかありました
そこでは「いえ、仲良しということ自体は何も悪くないよ」と答えたものの、『思春期には親との関係性について異なる段階に入
り、仲間・友人との関係に軸足を置くようになる』と学んできた昭和の私からすると、微かな違和感を感じました。
そして、その違和感はある学生の『振り返りシート』の記述を読んで、より強く思うようになりました。
『私の友人に、このケースと似た子がいます。一人っ子なのもあり、お母さんとべったり依存している状態です。私と一緒にテーマパークに行っても、お母さんからひっきりなしにラインが来て、返信が遅れると叱られるそうなので、つねにラインを返していた。初めは「仲良しでいいなあ」と思っていたが、「本当に仲良しなのかな」と一回疑ってからは、なんか怖くなってしまい、あまり会わなくなってしまった。大人になってからも「仲良し親子?」のままだと、親から精神的に自立することが、とても困難た゜ろうと思ってしまった』
「仲良し親子」と聞くと、「今どき珍しい。いい親子関係ね」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、果たしてそうでしょ
うか?
子どもには、その年齢に合わせて体験していくことが、いろいろあるかと思います。
思春期・反抗期などは、まさしくその一つかと思います。
それまでは、「ママ ママ」となついていた子が、ある日「ババア」と言う。
「かわいい かわいい」と育てていたママから見れば、とんでもなくショックな出来事でしょうね。
しかし、ほとんどの場合、いつもでも「ババア」とは言わないものです。
そうした一種の通過儀礼を経ることには、意味があるのです。
もしも、それを体験せずに、いつまでも親子で行動していたら‥
このことについて、次回考えてみましょう。
こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキルの練習をしたりする会【コミュニケーションカフ
ェ】を開いています。
リアルでもOnlineでも開催しています。
詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。