子どもたちは、話したがっている 22 「私の気持ちをわかって」の「わかって」は、「解る」?「判る」?「分かる」?

スクールカウンセラーとして勤務していると、保護者や先生から「子どもたちが話さない」という相談をよく受けます。

そんな『話さない(と思われている)子どもたち』ですが、実は『自分の気持ちを分かって欲しい』と絶えず思っています。

そのため、子どもたちは『自分の気持ちを分かってくれそうな大人』を絶えず求めています。

そんな『気持ちを分かってくれそうな大人』になるための第一歩は、子どもの話をきちんと聴くこと(良い聴き手になる)ではないかと考えます。

しかし、実際に子どもたちに寄り添って話を聴いていると、いろいろな悩みが生じてきます。

 

第1部 子どもたちが「話さない」理由及び解決の提案について考えました。(以前のブログをご覧ください)

第2部 具体的な事例をもとに考えました。(以前のブログをご覧ください)

事例1 「うーん、訊き方下手!『大丈夫か?』では、誰も答えないよ」

事例2 「先生、あなたの進路ではなく私の進路です」

事例3 「先生の偏見で、私を見ないでください」

事例4 「先生、私も見て!」

事例5 「約束って‥それ、俺の約束じゃねえし‥」

事例6 「伝えたいのは何?力関係?それとも気持ち?」

第3部 「聴く」ときに心掛けたいことについて相手との会話で気を付ける具体的な考え方やスキル>

事例1  話に来なくなった、中学1年Aさんの場合

Aさんは、口数が少なく友達も少ない、おとなしい感じの子です。ところが、ある時担任の先生がたくさんのノートなどを持って階段を駆け下りてきたら、職員室前にAさんがいました。Aさんが自分から職員室前に来る等ということは今までなかったので、「自分を頼ってくれているんだ」とうれしくなった先生は、で、「おっ、Aさんどうした?先生に用があるんだね。どうした?何だった?話聞くよ」と勢いよく話しかけました。すると、Aさんは「あっ、いいです」と言って、去っていき、その後話に来ませんでした。

スキル1 話す速さ、声の大きさ、声のトーン(明るさ)を、相手に合わせる  

スキル2 相手が話すことを聴くのは大切だが、「何を話さないか」を考えることも大切である

(ここまでは、以前のブログをご覧ください)

事例2 「私の気持ちをわかって」って?(大人のケースですが、参考事例として取り上げます)

臨床心理士のAさんは、年下ですが、カウンセリングの経験は数段長く、私は信頼し、何かと頼りにしている女性です。その彼女が、離婚したと聞いた私は、心身ともにお疲れモードの彼女を労わるために、一緒に夕食を食べることにしました。その食事中に、彼女から別れたパートナーについての『不満』『悪口』『愚痴』を聴くことになりました。もちろん、彼女の側からの一方的な話となります。(元パートナーさん、ごめんなさい。きっと、そちらにも言い分はあると思いますが、ここは彼女を励ます会なので、お許しください)彼女の口から聴く話は、なかなか理不尽な内容なので、私は少々怒れてしまい、「そんな人は別れて正解だったね」と言ってしまいました。すると、彼女は私の手を握り、泣き出すような表情で「そんなことを言ってくれて、うれしい」と言うので、私はびっくりしました。前述したように、ベテラン有能な臨床心理士の彼女は、知名度も高くお付き合いも広いので、「どうして?あなたはお友達や知人も多いじゃない!みんなは、何て言ったの?話してないの?」と尋ねたところ、「話したけど、他の人たちは『なるほど、それてあなたのその時の気持ちは?』とか、『二年前のお正月のことが原因ね』等と言って、誰も私の気持ちをわかってくれない」と応えてくれました。

みなさん、どう思われましたか?

大人の離婚の事例なので、「うちの子の状態には関係ないわ」と言われる方もいらっしゃるかと思いますが、ここには大切なポイントがあるかと考えます。

それは、『どうしたら、相手の気持ちをわかるか』ということです。

 

ここで、クイズです。

『私の気持ちをわかって』という時の「わかる」は、以下の漢字のうちのいずれでしょうか?

「解る」? 「判る」? 「分かる」?

 

正解は、「分かる」です。

解説していきます。

まず「解る」は、その理由や手法を理解する場面で使用します。

例えば「因数分解が解った」といった言い方です。

次に「判る」は、その言い分の価値を決めます。

例えば「犯人が判る」といった言い方です。

 

話を戻します。

彼女の離婚の話を聴いた友人や知人のみなさんは、彼女の話を「解る」や「判る」といった気持ちで聞いたのではないでしょうか。

それに対して、私は「何でひどい人なの!」とその気持ちを共有する=『分かち合った』のではないかと考えられるのではないでしょうか。

どちらが優れているとか、ダメちいうことではありません。

その時、その場でどちらが適しているかということです。

そして、今回の彼女は「理屈とか評価を訊いているわけではない。私の気持ちを共有してほしい」というのが、願いだったのではないでしょうか。

このことは、今回のケースだけのことではありません。

子どもたちが「私の気持ちをわかって」と言う時には、ぜひ分かってあげてください。

その気持ちを共有してください。

よろしくお願いします。

スキル4 「私の気持ちをわかって」は、「分かる」で聴こう

 

こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキの練習をしたりする会【コミュニケーションカフェ】を開いています。

リアルでもOnlineでも開催しています。

詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。