不登校について考えましょう ⑯ 家庭に『心の居場所』がなければ、不安になって、学校へはいけないよ 

(写真は、北海道富良野から見た日の出の様子です)

今、『不登校』について考えています。

今までに

『不登校』に関する基本的なことがら(不登校の定義、人数など) 

「不登校の理由は、100人いれば100とおり」であるが、大まかに【学校の状況に原因】【家庭環境に原因】【本人の質に原因】の3つに分類される 

『本人の気質に原因』に分類された内容 ケース【中2野外学習のマス掴みで生じたトラブル】を題材として、彼の気質にアプローするとともに、そのためのソーシャルスキルトレーニング

以上について、みなさんと一緒に考えてきました。(以前のブログをご覧ください)

 

そして今は、【家庭環境に原因】に分類された以下のケースについて、考えています。

ケース【小4大好きなママとおばあちゃんの気持ちのすれ違いで生じたトラブル】(内容については、以前のブログをご覧ください)

Aちゃんとお母さんが、私が勤務している子ども適応相談センターを見学されましたが、その時の『礼儀正しい(すぎる)』『行儀が良い(すぎる)』

Aちゃんと話してみて、『Aちゃんの周囲への年齢不相応の気遣い』が、『登校渋り』の一因ではないかと考えました。

例えば、こんな場面です。

Aちゃんと話す中で、「自分を褒めてあげたいところはどこ?」「自分でちょっと残念と思うところはどこ?」と質問したところ、「褒めてあげたいと

ころは、宿題をきちんとやるところ」であり、「残念と思うところは、ゲームの時間とか大人の人との約束が守れないときがあること」という答えが返

ってきたのです。

その時のAちゃんの表情を見て、Aちゃんは自分自身の思いや考えではなく、『周囲の大人がどう思うか』という、大人の視点・価値観を配慮(忖度し

て)して、考えたり行動したりしているのではないかと考えさせられました。

こうした気遣い?配慮?忖度?を続けていく中で、Aちゃんはいつも周囲の目を意識して、顔色を見て行動するようになったのではないでしょうか。

Aちゃんは周囲の人に気を遣うあまり、心が疲れてしまい、『学校へ登校できなくなった』のではないでしょうか。

 

では、そんなAちゃんに対して、私たちはどのような支援・指導ができるのでしょうか。

もちろん、Aちゃんは誰かを傷つけたり、自分の思いや考えを押し付けたりしているのではありません。

それどころかむしろ、自分の考えよりも周囲の人の気持ちを大切にしているわけです。

ある意味、素晴らしいことと言えるかもしれませんが、しかしAちゃんには(アドラーが言うところの)自分の人生を生きてもらいたいのです。

もしも、Aちゃんがいつも自分の気持ちよりも周囲を優先していると、どんなことが起こるでしょうか?

例えば、私の授業を受けている大学生から「私はいつも周囲の人の意見に合わせてきた。空気を読んでいたのだと思う。だから今までトラブルには何も

遭ってこなかった。しかし、大学生となり指導の先生から『ところで、君は何をしたいの?』と尋ねられた時、何も答えられなかった。私は一体何をし

たいのだろう。これから、どうすればよいのですか?」という質問を受けました。

Aちゃんは小学生ですから、この大学生のようにある意味要領よく振舞うことはできないでしょう。

その代わりに、トラブルがおこるでしょうし、その結果ますます気を遣うことになるかもしれません。

では、周囲にいる私たち大人としては、どうすればよいでしょうか。何ができるでしょうか。

まずは、Aちゃん(そうした子ども)の気持ちをよく聴くということです。

こんな事例もあります。

あるお父さんが「うちの子は約束を守らない。どうすればよいか」と相談に来られました。

よく話を聴いてみると、「ゲームばかりやっているので、宿題を8時までにすませたら、その後はゲームをやってもいいという約束をしたが、いっこう

に守ろうとしない」ということでした。

しかし、翌日その子どもが話したことは「ずっーと2時間くらい叱られていた。その最後に、『宿題をやってからだぞ。いいな分かったな』と言われた

から、うなづいた。先生だったらウンと言わない?」と尋ねられたので、「もちろんウン」と答えました。

そこで、そのお父さんには「あの約束は、お父さんの約束であって、お子さんの約束ではないですよね」とお話しました。

お父さんは「どういう意味ですか?」と尋ねられました。

そこで「確かに父親と子どもの間で、約束という形のことをしたと思いますが、息子さんは本当に納得しているでしょうか。お父さんから長い時間叱ら

れた後での約束と聞きました。仮に、子どもだった頃のお父さんが、父親であるおじいちゃんから同じように言われたら、条件反射的に約束に同意され

ませんか?」とお答えしました。

すると、お父さんは苦笑いしながら「はいと言うでしょうね。そうか、子どもと話し合い、子どもの気持ちを考えたつもりでしたが、私の考えを一方的

に押し付けていたのですね」と言われました。

また「私の言っていることは正しいと思っていましたが、押し付けではダメなのですね」とも言われました。

幸い、お父さんはとてもよく理解してくださいました。

そうなのです。

周囲の大人である私たちは、絶えず子どもたちに『良かれ』と思って行動していると思います。

しかし、その『良かれ』は誰にとっての『良かれ』なのかと、一度考えてみる必要があるのではないでしょうか?

(オマケですが、「あなたのためでしょ」は子どもたちがとても嫌がる言葉です。この言葉に対する切り返しは「誰も頼んでないし…」です。また、ど

こかで詳しくお話する機会があるかと思います。)

ですから、子どもと話すときに「自分の考え」を押し付けたり、「こういうことでしょ?」と誘導したり、「早く言いなさい」と焦らせたりすると、自

分の気持ちとは異なっていても、子どもはそれに応じようとしてしまうのです。

 

その結果、今取り上げているAちゃんは『大好きなママと大好きなおばあちゃんの価値観の違い』に気を遣いすぎて、心が疲れてしまったのだと考えま

す。

『家庭内に心の居場所がないならば、かえって学校へ行くのではないか』とのお尋ねもありましたが、『家庭内に居場所があるから、落ち着いて登校で

きる』と考えます。『家庭内に心の居場所がない』ならば、『家庭を離れること』が心配で、学校なんかへ出かけることができなくなってしまうのでは

ないでしょうか?

 

さぁ、ここまでAちゃんのケースを参考にして、『家庭内に原因がある』ケースにつすてお話してきました。

これで、3つのパターンについて説明しましたが、【不登校】についてもう少し話を続けていきます。

よろしくおつきあいください。

 

こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキの練習をしたりする会【コミュニケーションカフ

ェ】を開いています。

リアルでもOnlineでも開催しています。

詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。