不登校について考えましょう ⑩SST やって見せ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ
(写真は、北海道富良野から見た日の出の様子です)
今、『不登校』について考えています。
『不登校』に関する基本的なことがら(不登校の定義、人数など)について、3回(①~③)でお知らせしてきました。
その後、ケース【中2野外学習のマス掴みで生じたトラブル】を題材として、いくつかの視点から、考えてみました。
一方、「不登校の理由は、100人いれば100とおり」です。
ただ、大きく【学校の状況に原因】【家庭環境に原因】【本人の気質に原因】の3つに分類されると考えています。
そこで、今は【本人の気質に原因】を切り口として、ケース【中2野外学習のマス掴みで生じたトラブル】に迫っています。(以
上、詳細については、今までの記事をご覧ください)
彼(不登校傾向の中2男子)の行動を振り返ってみると…
例えば、小学校の授業中の様子からは、集団の中での行動規範という『社会性』が育っていないことがうかがわれます。
また、そうした言動をすることで、周囲の級友がどう思うかという『想像力』の乏しさも考えられます。
そして、せっかく級友たちにマスの掴み方を教えて「すごい」と褒められているのに、上から目線で言い反発されてしまうという『コミュ
ニケーション』の下手さも見えてきます。
そこで、そんな彼の特質に対しての、アプローチを考えています。
1 彼も、みんなも大切にしたいから「緊急避難」(内容については、前回のブログをご覧ください)
今回は…
2 彼の特質自身への取り組み【ソーシャルスキルトレーニング】
スクールカウンセラーとして勤務している学校で、こんな光景を目にしました。
小学2年生の男子2人が、トラブル(一方が他方が嫌がることをしたので、他方が泣いて、先生に訴えた)になったので、担任の先生が両方に注
意し、「嫌がることを言ってはいけないね。これからは、自分がされて嫌なことは相手にしないようにしようね」と諭されていました。すると、
相手が泣いたので「ごめんなさい」と言っていた子が、「僕は言われても嫌じゃないよ」と言いました。先生は「そんなことは言わないの」と言
って、何とか謝罪させていましたが…どう思いますか?
私は、これはまずいなぁと思いました。
みなさんは、いかが思われますか?
私は、『自分がされて嫌なことは相手にしない』という指摘が、適切ではないと考えます。
確かに、私が新米教員だった頃は、『自分がされて嫌なことは相手にしない』で、良かったと思います。
なぜならば、社会全体に(学校という社会の中でも)、『これはいい』『これはよくない』といった、ある意味暗黙のルールというか、価値観が
共有されていたと思うのです。
でも、今はどうでしょうか?
よく言えば価値観の多様化ということでしょうが、大人の社会にそうした『共有されている価値観』がなくなっていると思います。
そうした大人の中で育つ子どもたちの世界に、『これはいい』『これはよくない』という共有された価値観が成立されていないなんて、当たり前
ですよね。
ですから、子どもの口から「僕は言われても嫌じゃないよ」という言葉が出てくるのは、いわば当たり前ではないでしょうか。
そこで、「そんなこと言わないの」と諭すのではなく、むしろトラブルを良い機会と捉えて、一つ一つ『周囲の人との関わり方』を教えていくこ
とが、とても大切ではないかと考えます。
それこそが、ソーシャルスキルトレーニングではないでしょうか。
ですから、今はケース【中2野外学習のマス掴みで生じたトラブル】の生徒について考えていますが、ソーシャルスキルトレーニングは全
ての子どもにとって、学校や社会で生きていく上で、大切な取り組みと考えています。
とりわけ、彼のように周囲との付き合い方が不適切である子どもにとっては、不可欠でしょう。
では、ソーシャルスキルトレーニングとはどのようなことをするのでしょうか。
簡単に言えば『周囲の人から親切にしてもらったら、何ていうの?ありがとう』、『誰かに迷惑をかけたら、何ていうの?ごめんなさい』です。
基本は、それだけのことですが、社会が複雑化している今、子どもの世界も複雑になってきており、簡単に「○○が悪い。◇◇に謝らなくちゃ」
と決めることが難しくなっています。
ケース【中2野外学習のマス掴みで生じたトラブル】の場合でも、誰が悪かったのでしょうか?
そこで、いろいろなケースを設定して、子どもたちに当事者として、「あなたならば、どうするの」と考えさせて、実際に取り組ませることが、
ソーシャルスキルトレーニングと考えています。
子どもたちは、成長するに従い、さまざまな知恵や知見を見につけていきます。
ですから、「~という場合に、どうすればよいですか?」と尋ねられた時に、「どうでもいい。別に嫌な思いをする人がいても、仕方ない」と
は、まず答えません。
ですから、ただどうするべきかという知識や知見を教え込むのではなく(それらは、子どもにとって情報にすぎません)、実際に体験させること
が重要であると考えます。
みなさん、ご存じかもしれませんが、【やって見せ、言ってきかせて、させてみて、褒めてやらねば、人は動かじ】(山本五十六)の言葉が、こ
こでとても腑に落ちてきます。
では、一緒に練習してみましょう。
練習①小学6年生の女子仲良し三人組。Aさんが朝登校したら、教室のカーテンのかげにBさんCさんがいて、話していた。そこで、Aさんは「おはよう」と声をかけたけれど、相手からは何の反応もなかった。そこで、Aさんは、「私は無視された。私はいじめられている」と、スクールカウンセラーの私のところほ、相談に来ました。
あなたならば、どのようにしますか?
次回、一緒に考えていきましょう。
こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキルの練習をしたりする会【コミュニケーションカフェ】を開いて
います。
リアルでもOnlineでも開催しています。
詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。