【子どもの心 若者の心 そして‥】21 ソーシャルスキルトレーニング

このシリーズでは、「相手との関係性が深まると、何でも言える関係になる」といった思い込み(と思います)を発端として、若者や子どもた

の心の様について、考えています。(詳細については、以前のブログをご覧ください)

そんな折、SNSで『褒められたくない若者たち』という記事を目にしました。

今の若者は、『褒められたくない、目立ちたくない、埋もれていたい』との考えです。

実際、大学生と講義を通して関わる中で、こうした思い・感情を感じることがあります。

そこで、『当たり障りのないように生きる』具体的な姿について

    『教育の何が、子どもたち若者たちに、こうしたことを教えてきたか』について

            『教育が取り組む(一人を大切にする)個性と(集団を大切にする)強調性の兼ね合いの難しさ』について

考えてきました。

そして、③について分かりやすくお話しするために、ある小学生男子(発達障害傾向がある)に焦点を当ててみました。

 

彼とは、一昨年前から関わっていのすが、学級内で結構トラブルを起こし、その不満を話すために、スクールカウンセラーである私のところへち

ょくちょく来ていました。

しかし、昨年は訪れる回数がめっきり減りました。

さらに、休憩時間に級友と運動場を入りまわっている姿も見かけるようになりました。

私としては、もちろん担任の先生としても、おそらく彼としても喜ばしいことと思います。

そこで、何がそうさせたのかについて考えてみました。

その結果として、以下の二つの取り組みが考えられました。

①学級の温かな雰囲気づくり(前回のブログ参照)

いかがでしたか。

このクラスには、(集団を大切にする)強調性が育ちつつあることを、皆さんも感じられたことと思います。

さらに、このクラスは、○○ちゃんには居心地のよいクラスでしょうが、そればかりではなくクラスの児童すべてにとって居心地の良いクラスで

あり、それは結果としてクラス内に協調性が育まれており、ユニバーサルデザインタイプのクラスの萌芽が現れつつあることにも気づかれたので

はないでしょうか。

 

しかし、これだけでは、次年度に違う担任、違う児童のメンバーとなったら、この成果成長が元へ戻ってしまうということがあるかもしれませ

ん。

そこで、もう一つの取り組みが必要となります。

それが(一人を大切にする)個性の伸長と考えます。

ここから、お話していきます。

 

②一人一人の個性の伸長

彼が、前の席の女子の三つ編みを引っ張ったことで、相手を驚かせてしまったのは、確かに彼がいけなかったと思います。

しかし、視点を変えてみると、それだけ一つのことに集中するいえ集中できることは、ある意味能力ですよね。

また、大好きな本を手に入れようと、人込みの中に「グニュグニュ」と入り込んでいくのも、ある意味情熱を感じます。

事程左様に、物事って視点をどこに置くかによって、評価が異なるのではないでしょうか。

しかし、現実問題として、周囲の人みんなに、「彼と同じ視点に立ってね」といつもお願いするわけにはいきません。

そこで、彼の言動のプラス面を認めながらも、周囲との軋轢を減少する方向に変化を加えていくことを考えていきたいと考えます。

今流行りの言葉で言うならば、リノベーションしていくと言えるかもしれません。

そのために、彼と取り組みたいことが、ソーシャルスキルトレーニングです。

以前に、『好きな本を手に入れようとして、グニュグニュ入っていく代わりに、どうすればいいのか』と考えさせた、例の取り組みです。

分かっていただけたでしょうか。

他の具体的な事例を紹介します。

事例① 彼は、落ち着きのない行動をよくします。その結果、給食を配膳している最中に牛乳瓶を倒して、机上や床が汚れます。学級内には、親

切な子が結構いて、彼らが雑巾を手に集まってきて、きれいにしてくれます。そのときに、彼はボッーと立っています。彼等も慣れているので、

そこで何も言いません。担任の先生がお礼を言い、彼の落ち着きのなさを叱って終了という情景をよく見かけますが、大切なことはあと一押しで

はないでしょうか。

もちろん彼に不注意な行動を反省させることは大切ですが、おそらく彼はまた同じことをするでしょう。

そうした自分自身の内面を見つめる行動=反省とともに、彼に対して親切にしてくれた級友たちへのお礼を言うことが大切であることを、教えて

いきたいです。

すなわち、『親切にしてもらったら、ありがとうと言う』ということです。

事例②  彼は、算数が得意で計算も速く、自分でも「算数好き」と言っています。算数の授業中に、先生が「この問題が分かった人は、周りの人に

教えてあげてね」と言ったので、彼は大張り切りで、周囲の子たちに「教えてあげる」ともうアピールをしますが、みんなから相手にされていま

せん。すると、まだ答えの出ていない隣の子のノートに、勝手に好き初めてしまい、嫌がる子との間でトラブル発生。ここで、先生から指導が。

彼は、得意な算数を生かし、先生が言うように「教えてあげる」ことができるので、とてもうれしかったと思います。

そこには、級友への親切な心遣いもあったでしょうし、日頃は認められることの少ない自分が認められることへの喜びもあったと思います。

しかし、その行動に問題があったわけです。

そこで、「友だちのじゃまをしてはダメ」という注意ではなく、「教えてあげようとしてくれてありがとうね。でも、◇◇くんは自分でやりたか

ったのかもしれないよね」と話し、「どうすると良かったの?」と彼に考えさせてみたらどうでしょうか。

そこで、『あなたにはあなたの都合があるように、友だちらも友だちの都合がある』ということに気づかせ、「教えてあげるけど。いい?」と友

だちり気持ちを尋ねるという言葉かけについて説明しました。

すなわち、『親切な行いでも、相手の気持ちを大切にしよう』ということです。

 

どちらにも、彼も彼の周囲の子どもたちも、誰も悪くないので、その気持ちを大切にしていきたいという意図があります。

 

次回は、ここまでを振り返ってみましょう。

次回も、ぜひご参加ください。

 

こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキの練習をしたりする会【コミュニケーションカフェ】を開いて

います。

リアルでもOnlineでも開催しています。

詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。