子どもたちは、話したがっている 21 「聴くときに心掛けたいこと・スキル」②「話さないこと」に気を付けて

いまどきの子どもたちの気持ちや考えていることについて、考えています。
(1か月のお休みでした。失礼いたしました。これから、以前と同じく、これからもよろしくお願いいたします。)
スクールカウンセラーとして勤務していると、保護者や先生から「子どもたちが話さない」という相談をよく受けます。
そんな『話さない(と思われている)子どもたち』ですが、実は『自分の気持ちを分かって欲しい』と絶えず思っています。
そのため、子どもたちは『自分の気持ちを分かってくれそうな大人』を絶えず求めています。
そんな『気持ちを分かってくれそうな大人』になるための第一歩は、子どもの話をきちんと聴くこと(良い聴き手になる)ではないかと考えます。
しかし、実際に子どもたちに寄り添って話を聴いていると、いろいろな悩みが生じてきます。
第1部 子どもたちか゜「話さない」理由及び解決の提案について考えました。(以前のブログをご覧ください)
第2部 具体的な事例をもとに考えました。(以前のブログをご覧ください)
事例1 「うーん、訊き方下手!『大丈夫か?』では、誰も答えないよ」
事例2 「先生、あなたの進路ではなく私の進路です」
事例3 「先生の偏見で、私を見ないでください」
事例4 「先生、私も見て!」
事例5 「約束って‥それ、俺の約束じゃねえし‥」
事例6 「伝えたいのは何?力関係?それとも気持ち?」
(以上については、以前のブログをご覧ください)
第3部 「聴く」ときに心掛けたいことについて<相手との会話で気を付ける具体的な考え方やスキル>
事例1 話に来なくなった、中学1年Aさんの場合
Aさんは、口数が少なく友達も少ない、おとなしい感じの子です。ところが、ある時担任の先生がたくさんのノートなどを持って階段を駆け下りてきたら、職員室前にAさんがいました。Aさんが自分から職員室前に来る等ということは今までなかったので、「自分を頼ってくれているんだ」とうれしくなった先生は、で、「おっ、Aさんどうした?先生に用があるんだね。どうした?何だった?話聞くよ」と勢いよく話しかけました。すると、Aさんは「あっ、いいです」と言って、去っていき、その後話に来ませんでした。
スキル1 話す速さ、声の大きさ、声のトーン(明るさ)を、相手に合わせる (前回のブログをご覧ください)
スキル2 相手が話すことを聴くのは大切だが、「何を話さないか」を考えることも大切である
子どもたちが何か話そうとしたときに、みなさんは一生懸命に聴こうとされると思います。
とりわけ。何かトラブルが生じたりしたときには「どうしてそうなさたの?」「それて、どうしたの?」と言わば、根掘り葉掘り聞かれるかと思いまする
そうすることで、「言うんじゃなかった」とか「この人に言ってもムダ」等の感情が子どもの心に湧いてくるかもしれないことについては、以前にお話したとおりです。
そらに、ここでちょっと考えていただきたいのは、『いっぱい話しているのに、なぜかあることだけ話さない』という場合に、もし出会われたならば、そこでみなさんのアンテナの感度を高めてください。
こういうケースがありました。
私が新米の中学教師だったころは、世間では「荒れる中学校」「対教師暴力」等が毎日話題となっていました。私のクラス7にも、いわゆる「ヤンキー」の少年がいました。彼はさまざまなこと(他校の生徒との暴力沙汰、カツアゲ等)をやっており、警察にも大変お世話になっていました。そこで、ある日彼と一対一で話をして、「○○ってやったの?」と問いただすと、「何でしっとるの?」と言いながら、ほとんどのことを認めました。中には、私の知らないことも言い(私は内心驚きましたが‥)「えっ、先生知らなかった?」と訊くので、「もちろん知っていた」と話を合わせたこともありました。しかし、スーパーでお弁当ら三つ万引きしたことだけは、認めませんでした。
みなさん、なぜだと思いますか?
暴力等で叱られることは、彼自身のことなので、彼としても納得している部分があると思います。
しかし、お弁当の件は違います。
彼のお家の経済状態につながるわけです。
自分の家が、今とても貧しいということは、彼はどうしても認めたくない、他人に知られたくないのだと思います。
そこに、彼のプライドがあるのではないかと考えます。
ペラペラとよく話す子どもが、あることだけ話さないということは、そこに彼自身の他人に知られたくない秘密があり、アイデンティティがあるのではないかと考えます。
そこに目を向けることで、その子の理解が一段と深まるのではないかと考えます。
子どもが話す内容はもちろんですが、話さないことにも目を向けたいものです。
次回は、スキル3について、一緒に考えていきましょう。
こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキルの練習をしたりする会【コミュニケーションカフェ】を開いています。
リアルでもOnlineでも開催しています。
詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。

