子どもたちは、話したがっている ⑮ 事例④ 『偏見で、私を見ないで!』
いまどきの子どもたちの気持ちや考えていることについて、考えています。
スクールカウンセラーとして勤務していると、保護者や先生から「子どもたちが話さない」という相談をよく受けます。
そんな『話さない(と思われている)子どもたち』ですが、実は『自分の気持ちを分かって欲しい』と絶えず思っています。
そのため、子どもたちは『自分の気持ちを分かってくれそうな大人』を絶えず求めています。
そんな『気持ちを分かってくれそうな大人』になるための第一歩は、子どもの話をきちんと聴くこと(良い聴き手になる)ではないかと考えます。
しかし、実際に子どもたちに寄り添って話を聴いていると、いろいろな悩みが生じてきます。
その1 「話をきちんと聴きたいけど、同じ話がエンドレスに続いて正直疲れる」(以下の詳細については、以前のブログをご覧ください)
知っておきたい知識・スキル①
『本当の困りごとは、水戸黄門の印籠と同じく、終わり10分前に出てくる』
知っておきたい知識・スキル②
『【枠】をつくってあげる方が、話しやすいときもある』
その2 「話を聴いても、気の利いたアドバイスするって難しい‥」
知っておきたい知識・スキル①
『「気持ちをわかる」とは、「分かる」であって、「判る」「解る」ではない』
その3 「話し上手っているけど、聴き上手もいるの?」
知っておきたい知識・スキル①
『「聴き上手」のためには、波長合わせが大切』
知っておきたい知識・スキル②-1(この詳細は、前回のブログを参照ください)
『話を聴けないのは、相手を信じていないから?』
知っておきたい知識・スキル②-2
『話を聴けないのは、自分自身にOKと言えないから?』
第2部 具体的な事例をもとに考えてみます。
事例1 「うーん、訊き方下手!『大丈夫か?』では、誰も答えないよ」
知っておきたい知識・スキル①
『気になる話題を細かく具体的に尋ねることで、子どもが話す事柄が明確になり、話しやすくなる』
事例2 「先生、あなたの進路ではなく私の進路です」
知っておきたい知識・スキル①
『相手の相談にのるときに大切なことは、DoingではなくBeing』
知っておきたい知識・スキル②
『こころの動きは、言葉の動きよりも遅い』
(次からが、今回の内容です)
事例3 「先生の偏見で、私を見ないでください」
生徒から、こんな相談をうけました。
中学2年生のAさんが、野外学習を前にしてこのごろつまらなさそうにしています。相談室で話をきいてみると、Aさんが言うには「来週野外学習の班決めをするのですが、うちのクラスには学校を休んでいるBさんがいます。小学校の頃から、そういう時にはいつもBさんと同じ班になっていました。先生から頼まれた時もあるし、それほど嫌でもないので、引き受けていました。でも、たまには私も仲良しと一緒になりたいと思って‥この前、先生にそのことを話してみたら、『そうか、今まで悪かったね。考えてみるわ』と言ってくれたのですが、今朝『やっぱり同じ班になってほしい』と言われてしまって‥どんどん話が進んでしまって‥構わないけど、何だか気分はブルーです」とのことでした。
いかがですか?
先生ならは、思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
まさしく、先生あるあるですよね。
Aさんは、確かにしっかりしたリーダータイプの女の子です。
同級生の誰からも信頼されて、頼られていますし、先生方も何かというと「Aちゃんに頼もう」と言い、Aちゃん自身も気持ちよく引き受けてくれて、しっかりその役割を果たしてくれる‥と、誰もが思っていたのですが、実はそうではな
く、Aちゃんはかなり無理してくれていたということが、今回分かったわけです。
Aちゃんは、よく話してくれたと思います。
それだけに、その思いに教師をはじめ周囲の大人たちは、答えなければならないと考えます。
要するに、私たちが抱く「イメージ」のように子どもを考えてしまい、それなりのイメージで子どもたちを見てしまっていないかということです。
私たち自身の「色眼鏡」とか「物差し」で見るということです。
こんな状況では、子どもたちは『本心』を言いませんよね。
この逆の場合もあるかと思います。
例えば、「今まで学級の合唱コンクールの練習にいい加減だったBくんが、急に真剣に取り組み始めた(彼なりに、何か心を動かされたことがあったようです)」のですが、周囲の教師等大人たちは「どういう風の空き回し」「長続きし
ない」と、真剣に取り合おうとしませんでした。
すると、Bくんは合唱コンクールどころか、学校を休むようになってしまいました。
どちらも、先に述べた私たちのイメージで、子どもと接しているということです。
考えてみてください。
皆さんは、大人同士の付き合いの中で、「自分に対して真剣に付き合おうとしない人」と、真剣に向き合おうとしますか?
しませんよね。
適当に、表面上の付き合いでお茶を濁そうとしませんか?
なのに、どうして子どもにばかり「私がもつイメージどおりに振舞え」と、要求するのでしょうか。
子どもだって、自分に対して適当な対応をする人(周囲の大人、教師)に対して、適当な対応をするのではないでしょうか。
今一度、私たちのもつイメージではなく、子ども自身をきちんと見ているか、自分自身の「見方」を、振り返ってみましょう。
知っておきたい知識・スキル①
『自分の色眼鏡・物差しをはずして、子どもと向き合おう』
こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキルの練習をしたりする会【コミュニケーションカフェ】を開いています。
リアルでもOnlineでも開催しています。
詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。