子どもたちは、話したがっている ⑬ 事例①「『大丈夫か?』では、誰も話さない」
いまどきの子どもたちの気持ちや考えていることについて、考えています。(詳細については以前のブログ参照)
スクールカウンセラーとして勤務していると、保護者や先生から「子どもたちが話さない」という相談をよく受けます。
そんな『話さない(と思われている)子どもたち』ですが、実は『自分の気持ちを分かって欲しい』と絶えず思っています。
そのため、子どもたちは『自分の気持ちを分かってくれそうな大人』を絶えず求めています。
では、我々大人はそんな彼等に対してどのように対していけばいいのでしょうか。
それは、ありふれた表現になってしまいますが、根気よくきちんと接することと考えます。
では、根気よくきちんと接するためには、どうすればよいのでしょうか?
その第一歩は、子どもの話をきちんと聴くこと(良い聴き手になる)ではないかと考えます。
しかし、実際に子どもたちに寄り添って話を聴いていると、(経験された方は分かると思いますが)いろいろ大変なこともありま
す。
(以下の詳細は、以前のブログを参照ください)
その1 「話をきちんと聴きたいけど、同じ話がエンドレスに続いて正直疲れる」
知っておきたい知識・スキル①
『本当の困りごとは、水戸黄門の印籠と同じく、終わり10分前に出てくる』
知っておきたい知識・スキル②
『【枠】をつくってあげる方が、話しやすいときもある』
その2 「話を聴いても、気の利いたアドバイスするって難しい‥」
知っておきたい知識・スキル①
『「気持ちをわかる」とは、「分かる」であって、「判る」「解る」ではない』
その3 「話し上手っているけど、聴き上手もいるの?」
知っておきたい知識・スキル①
『「聴き上手」のためには、波長合わせが大切』
知っておきたい知識・スキル②-1(この詳細は、前回のブログを参照ください)
『話を聴けないのは、相手を信じていないから?』
知っておきたい知識・スキル②-2
『話を聴けないのは、自分自身にOKと言えないから?』
(ここからが、今回の内容です)
第2部 具体的な事例をもとに考えてみます。
今回からは、私が実際に体験した具体的なケースについて、考えていきます。
事例1 「うーん、訊き方下手!」
中学1年3組担任のA先生は、教師になって2年目ですが、熱心に学級運営に取り組んでいます。そんな元気な先生が、「ちょっといいですか?」と、スクールカウンセラーのところへ話しに来られました。
話を聞いてみると、「学級の生徒全員と話す「教育相談」が来週あります。自分からペラペラ話してくれる子はいいのですが、何を聞いても「べつに…」と黙ってしまう子には、どのように話せばいいのですか?去年も、そんな子に苦労しました。今年も、私のクラスには、あまり話さない子が何人かいるので、どうしたらいいのでしょうか」とのお話でした。
そこで、「先生はどんな言葉かけをされましたか?」と尋ねたところ「えーと、例えば『何か話すことはあるか?』とか『このごろ大丈夫か』といったことを訊きます」という返答でした。
さぁ、どんなことを思われましたか?
ここで、立場を入れ替えてみてください。
あなた自身が『何か話すことはあるか?』と尋ねられたら、どのように答えますか?
この時に、待ってましたとばかりに、「実は‥」と話すことができる人ももちろんいることでしょう。
しかし、大多数の人は「あっ、別にありません」と言うのではないでしょうか。
(第一、そのようにペラペラと話すことができる人ならば、教育相談以前のところで、教員と話していると思います)
また、「大丈夫か?」と尋ねられて、あなたはどのように返答しますか?
おそらく99%の人は、「大丈夫です」と答えるのではないでしょうか?
たとえ大丈夫てないとしても、「大丈夫ではない」と答える人は稀かと思います。
(以前、私は会議中の問いかけに対して「大丈夫ではない」と答えて、会場がシーンと凍り付いてしまったという体験があります)
あなたが、私たち大人がそうならば、子どももそうなるのではないでしょうか?
もしかして、「いや、子どもだから思ったことをそのまま言うのでは?」と思っている方もいらっしゃるかと思いますが、現在小学
校4年生全員と個人面談している私は、毎日「私は違う方がいいと思うけど、友だちにどう思われるだろうと考えると、私もみんな
と同じ方を選ぶ」と『忖度?』『同調圧力?』を感じている子どもたちと対面しています。
では、この先生にどのようにアドバイスしましょうか?
ここまでのいきさつをまとめてみます。
質問① 「何か話すことある?」と尋ねられたら、どのように答えますか?
質問② 「大丈夫?」と尋ねられたら、どのように答えますか?
この質問は‥話の訊き方、下手!
この質問では、子どもはどう話していいのか分からない
では、どんな訊き方が適しているのでしょうか?
さまざまなアドバイスがありますが、まずは『具体的に訊く』というのはどうでしょうか。
例えば「大丈夫?」と尋ねる代わりに、「先週、ゲームのことで家で叱られたって言ってたよね。あれは、どうなった?お父さんと話し合った?なかなか、面と向かって『ごめんなさい』と言うのって難しいけど、時間がたつともっと難しくなるんじゃないかな?そのこと、私は気になっていたけど、もういい?よかったら、ちょっと聞かせてほしいなぁ。OKならば、他の話題でもいいよ」
と、気になる話題を細かく具体的に尋ねることで、子どもが話す事柄が明確になり、話しやすくなると考えま
す。
いかがでしょうか?
次回は、大学生の高校時代の先生のアドバイスについて考えます。
こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキルの練習をしたりする会【コミュニケーションカフ
ェ】を開いています。
リアルでもOnlineでも開催しています。
詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。