不登校について考えましょう ⑳ 「どうでもいい子」はいない、「みんな特別な子」
今、『不登校』について考えています。
〇『不登校』に関する基本的なことがら(1年間に、300000人超えの小中学生が不登校!など)
〇「不登校の理由は、100人いれば100とおり」。
でも、大まかに【学校の状況に原因】【家庭環境に原因】【本人の気質に原因】が考えられる。
〇『本人の気質に原因』に分類された内容
ケース①【中2野外学習のマス掴みで生じたトラブル】を題材として、彼の気質にアプローチ+ソーシャルスキルトレーニングの練習
〇『家庭環境に原因』に分類された内容
ケース②【小4大好きなママとおばあちゃんの気持ちのすれ違いで生じたトラブル】を題材として家庭内での心の居場所の大切さの確認
+「話の聴き方」の練習
こうした流れで、みなさんと一緒に考えてきました。(以前のブログをご覧ください)
ケース③【小5こだわりの強い児童の言動が周囲に受け入れられなくてトラブル発生】(詳細は以前のブログをご覧ください)
①「ものや人の好き嫌いが激しくて、クラスの子どもたちと、よくトラブルを起こし‥」➡Aちゃんはこだわりの強い子?
②「昼の休憩時間に、Aちゃんは運動場で、ちょっと変わった虫を発見」➡級友と遊ぶよりも一人が好き?
③「「教室へ行こう」と何度も誘いますが、なかなかAちゃんは動こうとしません」➡好きなことに夢中になると、周囲が見えなくなる?
④「教室へ行くと、クラスは何とも言えない雰囲気になっていました」➡Aちゃんと担任の先生の両方にクラスの子が不満を抱いている?
⑤「「あーあ、勝手なことができる人はいいなあ」等と、Aちゃんに聞こえよがしに言った子たちがいました」➡Aちゃんに不満をもつ子がいる?
(学校の状況に原因)と紹介しましたが、それ以外の原因・理由・要素もからまってきて、とても複雑なようです。
でも、それが現実なのです。
そこで、複雑に絡み合った『さまざまな原因・理由・要素』を解きほぐして、一つ一つの対応策を考えていきます。
提言①
『Aちゃんはこだわりの強い子?』『級友と遊ぶよりも一人が好き?』『好きなことに夢中になると、周囲が見えなくなる?』
ここから、多くの人が「Aちゃんは発達障害?」と思われるかもしれません。
しかし、ここで「ラベルを貼ることで分かったつもりになって、何も対応せずに思考が停止してしまう」ことに、注意してください。
大切なことは、「ラベルを貼って満足する」ことではなくて、「そうした傾向の子にどのように支援していくか」なのです。
例えば、「○○ちゃんは、一つのことに集中することが苦手で、気が散りやすい」のならば、『一度に多くのことを言わずに、一つずつ指示を出
す』と、こちらが心掛ければよいのではありませんか?
提言②
「魔法の杖をエイッと一振りして、改善へ向かわせるなんてことを願うのではなく‥」
とは言いましたが、『魔法の杖』ならぬ『予防の杖』ならば、あるのでは?と考えています。
それは、ズバリ、ソーシャルスキルトレーニングと考えます。
ある状況(以前の事例は、混んでいる書店内で欲しい本にたどりつく方法)で、うまくいっても、異なる状況で、その子はトラブルに巻き込まれるかも
しれません。
「こんなことやっても、どうせ同じ状況には出会わないから、やっても無駄」なのではなく、そうした個々の状況を根気よく積み重ねていくこと
で、子どもの『考えて行動する力』を養っていくと考えます。
さあ、今回は上記の④について考えてみます。
提言③
「Aちゃんと担任の先生の両方に、クラスの子が不満を抱いている」
これこそが、まさしく『学校あるある』です。
多くの先生が、悩むところです。
今朝の新聞の「不登校」特集でも、「周囲の子どもと同じことが苦手だが、特別の才能をもった子どもが、『学校でみんなと同じことを強要されて辛か
った』と話している」内容が紹介されていました。
読者の中には「本当に学校は融通性がない。どうして、いつも子どもの個性を潰そうとするのか」と憤る方もいらっしゃるでしょう。
一方、学校関係者の中には「この子の個性を大切にしたいとは思う。しかし、この子だけを特別扱いはできないよね」と、担当の教師に同情される方も
いらっしゃるでしょう。
ここで、問います。
なぜ、特別扱いができないのでしょう。
ここに、『個と全体』の問題があると思います。
学校という場で生活する『集団』として、『尊重し合う』『個性を高め合う』『協力する』が目指す姿ではないかと考えます。
この三つの要素が重なり合うことは、まさしく現在言われている【多様性】の尊重に他ならないと考えます。
しかし、実際にはとても難しいことですよね。
自分と異なる生活習慣や考え方を受け入れることって、大人でも(大人だからこそ)難しいですよね。
(卑近な例ですが、私はもしも『隣の家に太宰が住んでいたら、鬱陶しいと思うだろうなぁ』と想像してしまいます)
そう考えると、まだまだ社会体験も乏しい子どもたちが、「特別扱いを許せない」と考えるのは、成長段階を考慮すると、とても自然なことではないか
と考えます。
さらに、多くの子どもたちは、結構正義感が強いのです。
ですから、「みんな平等であるべきた。私たちはチャイムで席に着き、授業を受けている。Aちゃんだけが、いつまでも運動場にいるなんて許されな
い。しかも、先生が一緒にいるなんて‥こんな不公平=不正義が許されるのか!これは『ひいき』だ!」と、考えるのも何ら不思議ではありません。
ましてや、「Aちゃんは発達障害という傾向があってね‥」といった説明はできません。
(また、これが解決策とも思いません。中には、「うちの子にはこういう特質があると、クラスのみなさんに紹介してください」と言う保護者もいらっしゃいますが、今でもレアケースと思います)
そのような状況で、悩む先生も多くいます。
では、Aちゃんも周囲の級友も気持ちよく過ごすことは無理なのでしょうか。
いえいえ、無理とは思いません。
発想の転換です。
『だれかをひいきしない』のではなく、『みんなをひいきする』としてみたら、どうでしょうか。
私には、担任をしていたときに、こんな体験があります。
中学2年の私のクラスに、成績は普通(本当にオール3)、委員にはならないが日直や牛乳当番の時はきちんと役目を果たす、体育大会や合唱コンクールでは目立った活動はしないが、朝の練習などでは遅れることなく熱心に取り組んでいるBさんという女子生徒がいました。「とても誠実な子だなぁ」と感心していた私は、よく「けいこ、けいこ」と声をかけていました。すると、ある日の生活ノート(毎日の持ち物を書き、1週間で思ったこと、考えたことを書いて提出する。担任と生徒の交換日記のようなもの)に、「私は今までのクラスで、ずっと目立たない子だった。先生からも、怒られはしなかったけど、褒められもしなかった。でも今年は、先生がよく『けいこ、けいこ』と言ってくれるし、みんなもよく話しかけてくれる。今年のクラスは大好きです」という記述がありました。そのとき、「私たち教師は、いわゆるヤンキーや不良タイプといった、とても手がかかる子や、逆に成績やリーダー性が優れているこ、また運動が得意な子といった目立つこどもに、ついつい目が向いているのではないか」と、反省しました。
その視点で、今回の事例を考えてみると、多くの子どもたちは「先生は、Aちゃんばかりひいき(特別扱い)している。私たちも特別扱いし
てほしい」ということではないでしょうか。
そこで、『クラスのみんな全員を特別扱いする』ことを提案します。
もちろん、1日で全員に声をかけることは無理かもしれません。
しかし、例えば朝の会で「みんな気づいてる? この頃、後ろの掲示物がきれいなのは○○ちゃんが、毎日きちんとやってくれているからだよ。ほら、このごろ画鋲なんて、おちてないでしよ?今種掃除当番の△△ちゃん、どう?(落ちてないですという声)ほらっ、いいなあ。では、今日も一日元気にすごそうね。えーと、連絡は‥」といった具合に、1日に数人軽く褒めていくことって、意外にできるのです。
でも、そのためには子どもたちの様子を観察することが大切です。
教師だけで無理ならば、「みんなのよいところ、素敵なところを紹介して」コーナーを作るのも、一つの手かもしれません。
そんな雰囲気のもとでは、「Aちゃんはずるい」発言よりも、「Aちゃんって、本当に虫のことを良く知っている」という子どもたちの認識の変化も生
まれやすいのです。
その上で、「Aちゃんは○○という良いところがあるけど、なかなか夢中になると他が見えなくなっちゃうね。みんなも素敵なところもあれば、ちょっ
とねっていうところもあるんじゃない?」といった認め合いやそうした活動を続けていくことによって、温かな雰囲気が醸成されていくと考
えます。
ぜひ、そんな温かな雰囲気をつくっていきたいものです。
そして、先生もAちゃんの指導に専念するならば、クラスのことは他の先生にお願いする等、クラスの子どもたちに「他っておかれている」とい
った気持ちを抱かせない配慮は、いつもこころがけていきましょう。
いかがでしょうか。
なかなか一朝一夕にできることではありませんが、心掛けていきたいです。
次回は⑤について考えます。
あまりにもしつこく非難する子には、その子自身が別の問題を抱えているかもしれません。
それについて、次回考えていきましょう。
こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキルの練習をしたりする会【コミュニケーションカフ
ェ】を開いています。
リアルでもOnlineでも開催しています。
10月11月の例会では、ちょうど『不登校』について考えています。
詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。