不登校について考えましょう ⑲ 『発達障害』というラベルを貼って、思考停止にならないように
(写真は、北海道富良野から見た日の出の様子です)
今、『不登校』について考えています。
今までに
〇『不登校』に関する基本的なことがら(1年間に、300000人超えの小中学生が不登校!など)
〇「不登校の理由は、100人いれば100とおり」。
でも、大まかに【学校の状況に原因】【家庭環境に原因】【本人の気質に原因】が考えられる。
〇『本人の気質に原因』に分類された内容
ケース①【中2野外学習のマス掴みで生じたトラブル】を題材として、彼の気質にアプローチ+ソーシャルスキルトレーニングの練習
〇『家庭環境に原因』に分類された内容
ケース②【小4大好きなママとおばあちゃんの気持ちのすれ違いで生じたトラブル】を題材として家庭内での心の居場所の大切さの確認
+「話の聴き方」の練習
こうした流れで、みなさんと一緒に考えてきました。(以前のブログをご覧ください)
そして現在は、以下のケース(学校の状況に原因)について、考えています。(再掲ですので、文字を小さくしました。読みにくくてごめんなさい)
ケース③【小5こだわりの強い児童の言動が周囲に受け入れられなくてトラブル発生】
Aちゃんは、ものや人の好き嫌いが激しくて、クラスの子どもたちと、よくトラブルを起こしてしまい、そうするとしばらく学校を休みます。ある日、昼の休憩時間に、Aちゃんは運動場で、ちょっと変わった虫を発見しました。もともと虫が大好きなAちゃんは、その場から動かなくなりました。午後の授業が始まるチャイムがなったので、担任の先生がAちゃんの近くへ行き、「教室へ行こう」と何度も誘いますが、なかなかAちゃんは動こうとしません。しぱらく経ってから、やっと教室へ動きました。教室へ行くと、クラスは何とも言えない雰囲気になっていました。担任の先生がいた間は、誰も何も言いませんでしたが、帰りの準備で、先生が不在になったところで、「あーあ、勝手なことができる人はいいなあ」等と、Aちゃんに聞こえよがしに言った子たちがいました。そんなことがあった後、Aちゃんは学校をよく休むようになりました。
この事例は、まさしく学校あるあるです。
①「ものや人の好き嫌いが激しくて、クラスの子どもたちと、よくトラブルを起こし‥」➡Aちゃんはこだわりの強い子?
②「昼の休憩時間に、Aちゃんは運動場で、ちょっと変わった虫を発見」➡級友と遊ぶよりも一人が好き?
③「「教室へ行こう」と何度も誘いますが、なかなかAちゃんは動こうとしません」➡好きなことに夢中になると、周囲が見えなくなる?
④「教室へ行くと、クラスは何とも言えない雰囲気になっていました」➡Aちゃんと担任の先生の両方にクラスの子が不満を抱いている?
⑤「「あーあ、勝手なことができる人はいいなあ」等と、Aちゃんに聞こえよがしに言った子たちがいました」➡Aちゃんに不満をもつ子がいる?
こうした情報を基に、こんなストーリーを思い描いてみました。
Aちゃんは、自分からクラスの子たちの中に入っていくことが苦手で、本人も一人でいるほうを好む子どもである。そして、Aちゃんのちょっとした不適切な言葉であったり、悪気はないものの、周囲の子どもの気持ちを逆なでするような言動で、ケンカになったりもしている。そんな時は、先生が双方の言い分を聞いて、お互いに「ごめんなさい」と謝罪させてきた。お互いに謝るものの、周囲の子どもたちは「先生はAちゃんをひいきしている」という思いをぬぐえないできている。また、Aちゃんも言葉で上手く言えないし、周囲の子どもたちに対して親しみをあまり感じていない。そこで、昼の休憩時間には教室や図書室で本を読んでいることが多いが、この日は偶然運動場でぶらぶらしていたところ、虫を発見した。虫好きなAちゃんとしては動く虫の後を追っていったら、大好きな虫を発見した。その時には、休憩時間はあと5分しかなかったが、Aちゃんはそんなこと分かっていないので、チャイムがなっても虫を眺め続けていた。しばらく経ったときに、担任の先生が「教室へ行くよ」と呼びに来たけれども、自分の世界の入り込んでいるAちゃんには全く聞こえていない。それでも、何度も先生が言うので、「教室へいかなきゃ」と思い、先生と教室へ行ったら、クラスの雰囲気が何となく変で、何人かの子はにらんできたし、後で嫌な悪口を言ってきたので、Aちゃんは「このクラスに僕の居場所はない」とを思い、学校へ来れなくなった。
いかがでしょうか。
こうしてみると、初めに(学校の状況に原因)と紹介しましたが、そればかりではなく、それ以外の原因・理由・要素もからまってきて、とても複雑な
ようです。
でも、今までの学校や適応教室での体験から考えると、それが現実なのです。
そこで、複雑に絡み合った『さまざまな原因・理由・要素』を解きほぐして、一つ一つの対応策を考えていきましょう。
とても面倒なことですが、とても大切なことと考えます。
一緒に考えてみてください。
提言①
『Aちゃんはこだわりの強い子?』『級友と遊ぶよりも一人が好き?』『好きなことに夢中になると、周囲が見えなくなる?』
ここから、多くの人が「Aちゃんは発達障害?」と思われるかもしれません。
確かに、その傾向がありそうですよね。
しかし、ここで『待った!』です。
ここで、安易にラベル貼りをすることの危険性を分かってほしいのです。
何度も言いますが、確かにAちゃんはそうした傾向(ADHDとかASDとか‥)が強いと、私も思います。
しかし私たちは、医師ではありません。
子どもの様子から、また検査結果から「〇〇ちゃんは発達障害」との診断をするのは、あくまでも医療の領分と考えています。
保護者が「うちの子は発達障害?」と考えて、いろいろ質問等をされるのは、親の心情として理解できます。
しかし、それ以外の人たち(学校の先生、親戚の人、近所の人など)が、「あの子は発達障害」とラベルを貼って、自分の限られた知見や体験で判断す
ることは、極端に言うならば『百害あって一利なし』と思います。
なぜならば、「ラベルを貼ることで分かったつもりになって、何も対応せずに思考が停止してしまう」からです。
大切なことは、「ラベルを貼って満足する」ことではなくて、「そうした傾向の子にどのように支援していくか」なのです。
例えば、「○○ちゃんは、一つのことに集中することが苦手で、気が散りやすい」のならば、『一度に多くのことを言わずに、一つずつ指示を出
す』と、こちらが心掛ければよいのではありませんか?
例えば、「○○ちゃんは、急な変更にについていけない」のならば、『いつものルーティーンを大切にして、変更するときには事前に教えて
あげる』と、こちらが心掛ければよいのではありませんか?
『学級の中で、Aちゃんの不適切な行為が周囲とトラブルを起こす』ことは、多々あるかもしれません。
しかし、何か魔法の杖をエイッと一振りして、改善へ向かわせるなんてことを願うのではなく、一つ一つ丁寧に対応していくことが、Aちゃんのそして
クラスのみんなの笑顔への解決策ではないかと考えます。
提言②
「魔法の杖をエイッと一振りして、改善へ向かわせるなんてことを願うのではなく‥」
とは言いましたが、『魔法の杖』ならぬ『予防の杖』ならば、あるのでは?と考えています。
それは、ズバリソーシャルスキルトレーニングと考えます。
以前に、このブログで「本屋さんで、人だかりのしている中にある、大好きな本に近づくためにどうするか?」という状況を基に、発達障害傾向のある
小学4年生と話し合い、その方法を練習したとお話しました。
その子が最初に考えた「グニュグニュと大人の間に入り込む」を否定はしませんが、「そうすると、大人の人とぶつかってけがをしたり、叱られたりす
るかもしれないよね。困ったね。どうすればいいんだろう?」という私の疑問に対して、その子と私の間での考えの試行錯誤の後、「『すみません。あ
の本を見たいので、通してください』と言えばいい」という、その子なりの結論に達しました。
これは、その子にとって大きな一歩と思います。
もちろん、「本屋さんでの~」という状況が、いつもあるわけではありません。
これとは異なる状況で、その子はトラブルに巻き込まれることでしょう。
しかし、こうした一つ一つの事例の練習を重ねていくことで、異なる状況でも『応用』が効くようになってきます。
おそらく、その子の中に『考え方の道筋』が生まれてくるのだと思います。
「こんなことやっても、どうせ同じ状況には出会わないから、やっても無駄」なのではなく、そうした個々の状況を根気よく積み重ねていくこと
で、子どもの『考えて行動する力』を養っていくと考えます。
ちょっとしたことから、始めてみましょうよ。
さあ、次回は上記の④⑤について考えてみます。
学校の先生になったつもりで、一度お考えください。
こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキルの練習をしたりする会【コミュニケーションカフ
ェ】を開いています。
リアルでもOnlineでも開催しています。
10月11月の例会では、ちょうど『不登校』について考えています。
詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。