不登校について考えましょう ⑮ 周囲に気を遣って、疲れていませんか?
(写真は、北海道富良野から見た日の出の様子です)
今、『不登校』について考えています。
今までに
〇『不登校』に関する基本的なことがら(不登校の定義、人数など)
〇「不登校の理由は、100人いれば100とおり」であるが、大まかに【学校の状況に原因】【家庭環境に原因】【本人の気質に原因】の3つに分類される
〇『本人の気質に原因』に分類された内容 ケース【中2野外学習のマス掴みで生じたトラブル】を題材として、彼の気質にアプローチするとともに、そのためのソーシャルスキルトレーニング
以上について、みなさんと一緒に考えてきました。(以前のブログをご覧ください)
そして今は、【家庭環境に原因】に分類された以下のケースについて、考えています。
ケース【小4大好きなママとおばあちゃんの気持ちのすれ違いで生じたトラブル】(再掲ですので、文字を小さくしました)
小学4年生のAちゃんの家は、昔からの古い家なので、広い敷地の中におじいちゃんとおばあちゃんが住んでいる家があります。そして同じ敷地のなかに、パパとママとAちゃんが住んでいる新しい家があります。Aちゃんは学校が終わるとおばあちゃんがいる家へ「ただいま」と帰ります。そこで、おやつを食べるのですが、おばあちゃんはよくAちゃんの大好物のおはぎを作ってくれます。この日もおはぎだったので、Aちゃんは「やったあ」と大喜びでした。その様子を見ていたおばあちゃんが「ママはこういうものをあまりつくってくれないものね」とポツリと言いました。Aちゃんは食べ続けましたが、(心の中にチクッとしたものが残りました)その日、パパとママと三人での夕食のときに、パパが「今日のおやつは何だった?」と尋ねたので、Aちゃんは「おはぎ」と答えました。すると、ママが「おばあちゃんのおはぎは美味しいけど、ちょっと甘すぎるのよね」と言いました、Aちゃんは夕ご飯を食べていましたが、(心の中にチクッとしたものが残りました)そんな日々が続いてしばらく経った後、Aちゃんは学校をよく休むようになりました…
(心の中にチクッとしたものが残りました) は、私の妄想ですが…
そして、Aちゃんとお母さんが、私が勤務している子ども適応相談センターの見学を申し込まれました。
Aちゃんは、見学の時から「ゲームがあるよ」等とはしゃいでいましたが、通所希望のインテークの時にも、「お願いします」と礼儀正しく、にこにこ
と愛想よく答えてくれました。
こちらの質問に対しての応答からも、「学校休みがち」の原因らしいものは見受けられませんでした。
ただ、気になったこととしては
〇いつも礼儀正しく「ハイ」と答える・愛想よく笑顔でいる
〇プレイセラピーのゲームで、自分が勝つと「やったあ」と喜ぶものの、すぐに負けた私を気遣って「あっ、ごめんね」と言う
〇通所している子どもどうしでウノをやっても、周囲を気遣う
ここに、Aちゃんを理解する一つの手がかりがあるように思いました。
すなわち、『Aちゃんの周囲への年齢不相応の気遣い』が、『登校渋り』の一因ではないかと考えました。
このことについて考えを深めていきましょう。
おそらく、少し前まででしたら、こういう子は「礼儀だたしい立派な子」「周囲に気を配る良い子」「負けた人を労わる優しい子」等と賞賛されたこと
と思います。
確かに、こうした子と一緒にいると気持ちよいですよね。
しかし、そうも言ってられない場面に出遭いました。
Aちゃんと話す中で、「自分を褒めてあげたいところはどこ?」「自分でちょっと残念と思うところはどこ?」と質問したところ、「褒めてあげたいと
ころは、宿題をきちんとやるところ」であり、「残念と思うところは、ゲームの時間とか大人の人との約束が守れないときがあること」という答えが返
ってきました。
「うーん、これはちょっと」と考えさせられました。
もちろん、「宿題をきちんとやること」は正しいですし、「ゲームの時間が守れない」のは今後直すべきところでしょう。
しかし、それは本当にAちゃんが自分で考えたことでしょうか?
全て『周囲の大人がどう思うか』という、大人の視点・価値観を配慮(忖度して)して、Aちゃんが考え行動しているのではないでしょうか。
こうしたことを続けていく中で、Aちゃんはいつも周囲の目を意識して、顔色を見て行動するようになったのではないでしょうか。
本来、小学4年生ならば、もっと『自己中』で『ワガママ』な言動をするものではないでしょうか。
確かに周囲の人の気持ちを考えて行動することは、素晴らしいことと考えます。
しかし、周囲の人の気持ちを考えるあまり、自分自身が傷ついてしまうのはおかしいと思います。
アドラーが主張するように(アドラー著『嫌われる勇気』)、子どもでも大人でも自分自身を生きるべきと考えます。
Aちゃんは周囲の人に気を遣うあまり、心が疲れてしまい、『学校へ登校できなくなった』のではないでしょうか。
では、そんなAちゃんに対して、私たちはどのような支援・指導ができるのでしょうか。
例えば、Aちゃんと保護者で約束をするときに、「『保護者の約束』ではなく『Aちゃんの約束』をして欲しい」とお願いしました。
このことについて、次回詳しくお話します。
みなさんも、考えてみてください。
こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキルの練習をしたりする会【コミュニケーションカフ
ェ】を開いています。
リアルでもOnlineでも開催しています。
詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。