不登校について考えましょう ⑨彼もみんなも大切にするために『緊急避難』というアプローチ

(写真は、北海道富良野から見た日の出の様子です)

今、『不登校』について考えています。

『不登校』に関する基本的なことがら(不登校の定義、人数など)について、3回(①~③)お知らせしてきました。

その後、ケース【中2野外学習のマス掴みで生じたトラブル】を題材として、いくつかの視点から、考えてみました。

 

一方、「不登校の理由は、100人いれば100とおり」です。

ただ、大きく【学校の状況に原因】【家庭環境に原因】【本人の気質に原因】の3つに分類されると考えています。

 

そこで、前回は【本人の気質に原因】を切り口として、ケース【中2野外学習のマス掴みで生じたトラブル】に迫ってみること

にしました。(以上、詳細については、今までの記事をご覧ください)

 

そこで、彼(不登校傾向の中2男子)の行動を振り返ってみると…

例えば、小学校の授業中の様子からは、集団の中での行動規範という『社会性』が育っていないことがうかがわれます。

また、そうした言動をすることで、周囲の級友がどう思うかという『想像力』の乏しさも考えられます。

そして、せっかく級友たちにマスの掴み方を教えて「すごい」と褒められているのに、上から目線で言い反発されてしまうという『コミュ

ニケーション』の下手さも見えてきます。

こうしてみると、彼にはいわゆる【発達障害傾向】があるのもしれません。

 

しかし、ここではそうしたラベル貼りを目的とするのではなく、あくまでも、そうした彼とどのように関わっていくかを考えていきたいです。

前回は、そうした彼の特質や傾向に目を向けたので、今回は彼に対してどのようなアプローチをするかについて、考えていきましょう。

 

1 彼も、みんなも大切にしたいから「緊急避難」

彼の様子を見ていると、数学は結構得意で、計算問題等の正答率が結構高いです。

ところが、国語で『主人公はこのとき、どのようなことを思ったでしょうか』といった類の質問には、「僕は主人公ではないから分からない」と

いう、ある意味秀逸な回答が返ってきました。(この回答は、私には受けました)

この傾向は、数学でも現れていて、計算問題は得意ですが、文章問題になると「文章読むのはダメ」と初めから降参してしまいます。

それでも、学年が進むにつれて、彼なりに努力はするのですが、どうしてもその我慢の限界が来ると、席にじっと座っていることができなくなっ

て立ち歩いたり、周囲の子どもたちにちょっかいをかけたりするようになります。

小学校の頃は、そうした彼に同調して一緒に騒いでくれる(!)子どももいましたが、中学生にもなってくると、周囲の目も冷ややかになってき

ます。

すると、彼はますますヒートアップしてしまいます。

それでは、彼があまりにもかわいそうです。

また、そこで対人的なトラブルが起こることで、周囲の子どもたちが不愉快な思いをすることも避けたいです。

そこで、『緊急避難』という手立てを考えています。

すなわち、彼の気持ちがモヤモヤ、ウズウズしてきたら、「ちょっと別の場所へ行きます」と自分から提案するか、事情を分かっている教師が

「ちょっと別の場所で落ち着いてきたら?」と提案します。

これは妙案(ベストとは言いません。ベターでしょうか)と思いますが、そのためには、さまざまな準備が必要となります。

① 彼に関わる教師全員が、そうした提案を共通理解しているという土壌が必要です。

面倒なようですが、ここに手間暇をかけることで、結果として大きなトラブルを避けることができ、彼自身も傷つかなくてすみ、周囲の子どもと

の関係性も悪くならずにすむと考えます。

② 学級の子どもたちが、「誰でも特異なこともあれば、苦手なこともある」という考えを受け入れる雰囲気が大切です。

多くの子どもは、『緊急避難』という方法に、どうしても「彼だけ特別扱い」という思いをもってしまいます。

それは、大人でもなく、彼の兄弟でもない級友にとっては、理解できないことでしょう。

そこで、『誰でも得意なこともあれば、苦手なこともあるよね』という考えを、学級活動のさまざまな場面で『教え』ではなく、実感として体験

させていくことが必要です。

「Aくんは、なかなか落ち着きがないけど、でもこの前のドッジボールの時、すごかったよね。反対に、Bさんはのんびり屋さんだけど、学級の

のデザインってめちゃめちゃきれいだったよね。Cさんは…」といった具合に、彼(A)くんばかりでなく、学級の子どもたちを教師が率先し

認めることで、学級内にお互いを受容する温かな雰囲気を醸成していきます。

➂ 彼に対する方針を、保護者とよく話しあうことが不可欠です。

彼のお母さんのように、多くの保護者は「うちの子は迷惑をかけていないだろうか」「もっと、学校が子どもをよく見て欲しい」等、さまざまな

思いに揺れ動いています。

中には、「うちの子は発達障害だから、そのことを学級のみなさんに伝えて、理解してもらってほしい」という考えの方もあれば、「うちの子を

特別扱いすることはやめてほしい」という考えの方いらっしゃいます。

どちらが良くて、どちらが悪いということではありません。

ここで大切なことは『レッテル貼りだけでは意味がない』という共通理解をすることです。

 

以上のようなアプローチを考えてみました。

いかが思われますか?

次回は、彼の特質自身への取り組みを考えます。

次回も、よろしくお付き合いください。

 

こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキの練習をしたりする会【コミュニケーションカフェ】を開いて

います。

リアルでもOnlineでも開催しています。

詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。