不登校について考えましょう ⑤ 発言「学校休んでるヤツに言われたくない」よりも、対応すべきことは?

今、『不登校』について考えています。

今までに基本的なことがら(不登校の定義や不登校の実態等)についてお話してきました。(以前のブログをご覧ください)

そして、前回からは具体的な事例に基づいて、考えています。

ケース①【学校を休みがちだった中学2年男子生徒が参加した野外学習でのトラブル】(再掲ですので、小さな文字になっています。読みにくいですよね。よろしければ、前回の記事をご覧ください)

Aくんは、小学校の頃から、授業中に立ち歩く等落ち着きのない行動がよくある生徒でした。しかしながら、大半の子どもが保育園時代からAくんの言動に慣れていたので、小学校ではそれほど大きなトラブルは起こっていませんでした。けれども中学校では、もう一つの小学校の子どもたちとともに生活するわけです。すると、「先生、Aくんは授業中に立っても、どうして叱られないのですか?」という、この年頃の子どもとしてはよくある質問が出てきます。それは、質問という形をとっていますが、おそらくはAくんに対してのクレーム、さらにはAくんを叱らない先生へのクレームというのが真意でしょう。そこで、Aくんは登校を渋るようになり、次第に欠席が増えてきました。

そして、2年生の夏休みに、Aくんたちの学年は野外学習へ出かけることとなりました。担任の先生は、「Aくんもぜひ連れていきたい」と考え、4月当初から「Aくんが少しでも親しい生徒と同じ班や係になれるように」と配慮した班編成や係分担を工夫してきました。クラスの子どもたちからの働きかけもあり、Aくんはクラスのみんなと一緒に野外学習へ参加しました。先生たちの心配をよそに、2日目の夜まで無事に過ごすことができました。そして、3日目の午前中は、川に入って『マス掴み』をします。実は、Aくんの家庭はよくキャンプに出掛けているので、Aくんはこうした活動が結構得意なのです。そこで、他の生徒たちとりわけマスを掴めない子どもたちに、Aくんがアドバイスをする姿が見られるようになってきました。生徒たちからも「Aくん、教えて」と声がかかり、Aくんもまんざらでもない表情で教えています。担任としては、予想もしていなかったことで、「良かったなぁ」と喜んでいました。ところが、もともとコミュニケーションが苦手なAくんは、相手の気持ちを考えた言葉がけをすることが不得手です。そこで、ついつい「こんなことできないの?」等と、上から目線で話しかけてしまうのです。それが何度か繰り返された結果、数人の生徒が怒って「学校休んでいるヤツに言われたくないよ」と言ってしまいました。すると、Aくんの顔色が変わり「帰る」と叫び始めて、収まりません。そこで、急遽保護者に引き取りにきてもらうこととなりました。その後、2年生の終わりまで、Aくんは登校してきませんでした。

 

これを読んで、どんなことを考えられましたか?

「Aくん、残念だったね」「参加できただけでも、よかったんじゃない?」「Aくんの気持ちも他の子の気持ちもあって…難しいねぇ」「誰かが

悪いってことじゃないよね」と、いろいろ考えられたのではないでしょうか?

そう、誰も悪くないと思います。

「仕方なかったね」と思います。

でも、もったいなかったなとも思います。

そこで、「どうすれば、より良い結果になったか」という視点で、振り返ってみましょう。

 

この件のいきさつを時間軸で捉えてみると、『2日間は大きなトラブルもなかった』とのことですから、やはり原因は『3日目のマスつかみの最

中のこと』考えられます。しかも、Aくんは周囲から「教えて」と頼られて気分よく取り組んでいたのですから、Aくんの上から目線の言い方に

腹を立てた数人の生徒の「学校休んでいるヤツに言われたくない」という言葉が、「家へ帰る」ことの最後の一押しになったのでしょう。

では、「学校休んでいるヤツに言われたくない」と言った数人の生徒が、悪かったのでしょうか。

私は違うと思います。

同じる年齢の子どもですから、教員等周囲の大人と違い、特別にAくんに配慮した言動はできないでしょうし、またそうしたことを、他の子ども

たちに要求することはおかしいと思います。

では、どうすればよかったのでしょうか。

私は、今回のケースは、野外学習へ行く前に、こうなる要因があったと考えます。

Aくんは、『授業中の経ち歩き』や『コミュニケーションが苦手』といった記述から、【発達障害傾向】がある子どもではないかと想像できま

す。小学校で、何とか過ごしていけたのは、周囲が彼に慣れていたからでしょう。しかし、彼を知らない子どもたちと一緒に過ごすことになる中

学校では、そう上手くいかず、些細なトラブルやザラッと感は、毎日の生活の中でしばしばあったと思います。そこで、Aくんは休むようにな

り、それを心配した先生が彼に適した『班編成や係分担』をされたわけです。先生は、Aくんに対してとても配慮されていて、Aくんのことをと

ても大切にされている良い先生と思います。おそらく、2日目まで無事に過ごせたことから、「ホッ」とされていたと思います。

そんな先生に酷なことを要求するようですが、その「配慮」にAくんの希望は考慮されていたでしょうか。『マス掴み』で、周囲から頼られたA

くんがまんざらでもない表情をしたということは、Aくんが野外学習に参加して、得るものがあったことの表れと思います。先生の頑張りも実っ

たわけです。先生が取り組んだことはAくんにとってプラスに働いたことは間違いないでしょう。だからこそ、事前の段階で、Aくんに『お客さ

ん』ではない意識づけができていたら…と、考えます。Aくんが『マス掴み』で活躍することは、事前に誰も知りませんでした。ということは、

もしかしたら、他にも活躍できる機会があったかもしれません。もしそれがあったら、ひょっとしてAくんが「帰る」と言う時の、彼の心の中の

「帰りたい」気持ちと「帰らない」気持ちのせめぎ合いは、肉薄していたかもしれません。

 

そして、もう一つ大切なことは、クラスや学年の生徒の気持ちにも、配慮がされていたかということです。

不登校傾向の生徒が登校した際に、先生はどうしても配慮して、中には「腫れ物に触る」ような扱いをする先生も見かけます。

「せっかく登校してきたのだから」という気持ちは十分分かりますが、そうすることで他の生徒たちが「休んでいる子は特別扱い」という不満

抱くこともありますよね。

なぜ、彼等は不満をいだくのでしょうか。

それは、日頃彼等は先生から、「自分たちは大切にされていない」という気持ちをもっているからだと思います。

ですから、Aくんに対する配慮と同じように、他の生徒に対しても配慮する必要がある、そしてこのニーズはこの頃増加してきていると感じてい

ます。

 

このことについて、またAくんのようなケースでの保護者等の働きかけについては、次回お話していきます。

 

 

 

こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキの練習をしたりする会【コミュニケーションカフェ】を開いて

います。

リアルでもOnlineでも開催しています。

詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。