【子どもの心 若者の心 そして‥】4 ソーシャルスキルトレーニング
目下、集団への適応が苦手な子ども及びその周囲の子どもたちへの対応について考えています。
例えば、①「虫へのこだわり」が強い生徒が、学級の子どもと異なる対応をしたときに、級友たちはどのように受け止めるか
②不登校傾向の強い生徒が、「学級のお楽しみ会に参加したい」と希望したときに、級友たちはどのように受け止めるか とい
った事例について考えてきました。
こうした事例は、集団(この事例では学級)の中での【個の尊重と集団の協調性】の兼ね合いの難しさを、私たちに考えさせます。
前回は、個の尊重について、子どもたちを本当に大切にするとは、彼等に社会で生きていく力を身に付けさせることとお話しました。
今回のAくんについても、同様のことが言えるのではないでしょうか。
すなわち、周囲の自分に対する気持ちを理解し、自分自身が周囲のみんなとどのように関わり合うかについて考えさせるとともに、社会で生きて
いく上でのスキルを身に付けさせることが必要と考えます。
例えば、こんなことに取り組んでみました。
③小学4年生男子のAくんは、好奇心旺盛で活発ですが、一つの物事に夢中になるあまり、他のことが見えなくなることがよくあります。そのため、級友とトラブルとなり、双方が不愉快な思いをし、担任の先生の仲介のもとで仲直りをするといったことを繰り返しています。そこで、彼が本を好きで、よく本屋へ行くという傾向に注目して、ソーシャルスキルトレーニングをすることにしました。
SC 「あなたが買いたい本の前には、大人の人たちがたくさんいて、近づけません。そういう時、どうするの?」
Aくん「ぐにゅぐにゅして、すきまから入っていく」
SC 「なるほどね。できるかもしれないね。でも、大人の人が持っているバッグから尖ったものが出ていて、ケガするかもしれないね。ちょつ
と危なくない?」
Aくん「そうか。どうしよう」
SC 「今。あなたは私と何をしているの?」
Aくん「お話してる。あっそうか。どいてって言えばいいんだ」
SC 「そうだね。ぐにゅぐにゅして入り込むよりは、口でお願いしたほうがいいよね。でも、『どいて』はちょっと感じ悪くない?」
Aくん「キレられちゃうかもしれない‥」
SC 「そうだね。じゃあ、どう言えばいいんだろう?」
Aくん「どいてください?」
SC 「ちょっとOK。あなたが、どいてほしい訳を説明したらいいんじゃない?」
Aくん「‥その本を取りたいので、どいてください」
SC 「そうだね。そんな感じかな?私ならば、その本を取りたいので、入れてくださいって言うかな」
Aくん「そう言うと、ぐにゆぐにゅするよりはいいんだ」
SC 「うん、あなたの言いたいことがきちんと伝わると思うよ。次からやってみようよ」
いかがでしょうか?
今回は、夢中になると他のことが見えなくなってしまうAくんについてお話しましたが、一人を大切にする考え方は、その一人を特別扱い(子ど
もたちの言い分では、ひいき)するのではなく、そうした扱いを全ての子どもたちに対応していく考えにつながると思います。
これこそが、全ての子どもたちを大切にする【ユニバーサルデザイン】の考え方ではないでしょうか。
次回は、もう一つの考え方集団の協調性について、考えていきましょう。
こうした身近な問題をもとに、参加者全員で話し合ったり、ロールプレイでスキルの練習をしたりする会【コミュニケーションカフェ】を開いて
います。
リアルでもOnlineでも開催しています。
詳しくは、このHPのトピックスをご覧ください。